03
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扉の向こうでは、おじさんとおばさんの二人が言い争っている。
ここは電気も窓もない。
唯一の光源はドアの隙間から入ってくる光。
階段下の物置
幼いころから、あの二人に何かしら不都合があると、お世話になってきた馴染みの場所だ。
何故こうなったのか。
動物園では別に何事もなかった。
確かに、蛇に話しかけられたり(もちろん受け答えなどしていない)、
ダドリーに突き飛ばされたり(おかげで痣が出来た)といろいろあったが、
特に問題はなかった。
ダドリーは帰りにまたプレゼントを買ってもらい上機嫌だったし、ダーズリー夫妻も嬉しそうだった。
だが、事は帰宅してから起こった。
【 プリペット通り 24番地 ダーズリー家 2階 西部屋 イベリス・ポッター 殿 】
あぁ 本当に 来てしまった
手に取ったとき、立ち尽くした。
だって、死刑宣告されたようなものだ。
今までの生活は、もはや手の届かないものとなる。
何とかこの手紙を抹消しなければ
とっさに思ったが、時すでに遅し
「パパ!ママ!見て、イベリスのヤツが手紙を勝手に見てる!」
「何をしている、え?お前さん当ての手紙など来るわけなかろう。勝手に人の手紙を見るんじゃない! 今度同じことをしてみろ、また物置に、閉じ、込、めて……」
おじさんの顔色が見る見る青ざめていく。
「、ペ、ペチュニアっ!!」
どうしたんですか、あなた
来て、しまった…恐れていたことが、来てしまった!!
何を…… ま、まさか …
そんな、アレに関するものなんぞ、一切触れさせなかったのに
な、何かの間違いですっ!あの子はアレを知らないし、使ったことなんてない!!
あぁ ああ アァ ……
アァ 忌々シイ 忌々シイ 消エテシマエバ良イノニ
ボゥッ ――――――
おじさんの手にあった手紙に火が灯る。
エメラルド色の炎を出しながら、手紙はゆっくりと灰と化していった。
「―――――― 今、なにを、した 」
あぁ、しまった。
感情をセーブしきれなかった。
とうとう、この人たちの前で、使ってしまった。
「 何をした?! 」
そして冒頭に戻るのである。
今までにも、ああいう異常現象は何度かあった。
それは主に自分の命にかかわりそうな危険な状況だったり、感情が激しく揺さぶられた時だったり。
だから、出来るだけ物事に動じないように心がけてきた。
幸い、精神はもうすでに立派な大人である。
相当なことがない限り、取り乱すようなことはしない。
だからこそ、今まで隠し通せてきたのにこれでは台無しだ。
一晩明けて、あの人たちの気が治まっていればいい。
明日は無理でも、明後日は約束があるから、出してもらわないと困る。
暗い物置の中で、一人ひざを引き寄せ縮こまる。
気分は過去最悪だ。
亡き父よ 亡き母よ
生きろというのならば
運命の女神とやらは
何故こうも危険な道へと私を誘うのか
そんなの、矛盾しているではないか。
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