02
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懐かしい夢を見た。
自分の、第二の両親と呼べるはずだった人たちの夢。
『懐かしい』と思えるくらい時間が経過していた。
そう思ってしまった自分自身に対して、少しばかりの嫌悪感を示す。
(なんか、年寄りくさい……)
辺りはまだ薄暗く、早朝の静けさに包まれている。
自分は下に住む家族が目を覚ます前に朝食の準備をしなければならない。
成り代わってからずいぶんたった。
といっても、本当の意味で《 ハリー・ポッター 》の代わりとしてではなく《 私 》として生活している。
そして今は同年代の子供にに比べて身長は低いが、もうなんでも一人でこなせる年頃だ。
それなりに葛藤もあったし、苦労もしたが、基本的に今家の人たちとは可もなく不可もなく平穏に過ごせているといっていい。
理不尽なことも多々あるが、基本的に女子である自分に無理難題はそんなに吹っかけてこない。
それでも慣れるまでは大変で、何かと余裕のない生活だったことも事実。
そんな風に過ごしていたある日、思い出してしまった。
【 あぁ、もうすぐ《 物語 》が始まる 】
今日は、いちよう従兄に当たるダドリー・ダーズリーの10歳の誕生日である。
物語では、手紙が来るのは今年のはずだ。
そして個人的には、行きたくない。
【 ホグワーツ魔法魔術学校 】
何が哀しくてあんな波乱に満ちた人生を送らねばならないのか。
台所にベーコン・エッグとトーストの焼けたにおいがたち始めたころ、ペチュニアおばさんが1階へとやってきた。
「おはようございます、ペチュニアおばさん。」
「…えぇ、おはよう。朝食の準備が終わったのなら、出かける用意をなさい。 今日は動物園に行くから、それなりの格好をね。」
それなりの格好といわれても、洋服はあまり持っていないのに。
あぁ、でもこの前、近所のお姉さんのお下がりにもらったワンピース。
あれなら、まだ綺麗だったから外に着ていっても恥ずかしくない。
まだ少し大きいが、大丈夫だろう。
「わかりました。」
普通に、平凡に、何事もなく暮らしたい。
そうすれば、私はまだ《 私 》でいられる。
それに今の生活に文句があるわけではないのだ。
「今日は僕の誕生日だ!」
「まぁ、まぁ、ダドリーちゃん。そうよ、今日は特別な日だものねぇ!」
「さぁ、おいで。プレゼントがたくさん届いている。」
さて、どうしたものか……
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