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次の日からの学校生活は毎日が何もかもが始めての連続で、慣れるのに骨が折れた。

第一に、教室の移動が面倒だ。
無駄に広いホグワーツは、一つの教室へ向かうのに行き方が何通りにもある。
前は通れた道順でも、次にそこを通れる確立は五分五分。
階段は勝手に動くし、扉は気紛れにストライキを起こして開かない時もある。



無機物のくせに生意気な。



そう思っても、通れないものは仕方ない。
移動時間は限られているし、遅れたら遅れたで先生によっては容赦なく寮点を減点していくのだ。



授業の方はわりと苦労せずに付いていっている。
毎日予習復習とまでは行かないが、文字を追いかけることは別に苦ではない。
授業や食事時以外、基本一人でいることのほうが多い自分は
やる事といえば人目を避けて校内を散策して暇を潰すくらい。

……何だか、友達がいない寂しい奴に見えないこともないが、こうした方が自分にとっては楽なのも事実。

今の自分と同年代の子供達に行動をあわせようとするには、
残念ながら少し体力と言うか気力と言うか、その他もろもろが足りない。



その結果が、今のこの状況なのだろうけれど。



「おい、見ろよ。」

「ああ、根暗ヒロインのご帰還か。」

「なんか、普通だよなぁ。」

「てか、期待はずれもいいところだろう。あんなつまんないヤツだとは思わなかった。」



一日の授業を終えて制服を着替えるために寮へ戻ると、談話室にいた何人かの生徒がひそひそとささやき合う。
同学年ではない。
おそらく先輩に当たる人たちだ。
彼らのような生徒は、入学後2,3日のうちに出始めた。
人の風評と言うものは悪いものであればあるほど広がりやすい。
彼らのように『イベリス・ポッター』にあまり好感を持たないものはあっという間に増えていった。
すでにグリフィンドール寮の過半数を占めている。
他の寮の生徒達に広がるのも、時間の問題だ。



仕方ないとは思う。
実際、自分が周りの人間と積極的にコミュニケーションをとろうとしなかったことも原因の一つだろうし。



しかし、ぶっちゃけてもいいだろうか?



正直な話、過剰な期待を寄せられても傍迷惑な話でしかないのだ。
世間で言う『生き残った少女』がどれほど偉大なのかは知らないが、普通に考えたら単なる孤児。



(勝手に期待して、勝手に幻滅されてもねぇ)



陰口程度ならいくらでも黙認しよう。
だがこれ以上場の雰囲気が悪化するなら、何かしら打開策を打たなければなるまい。



(……面倒な)



女子寮で一人、制服を着替えながらため息をつく。
ああ、そういえば、今日は変身術と闇の魔術の防衛術から早速課題が出されていたんだっけ。
夕食までには時間があるし、何より話し相手がいないのは存外暇なものである。
図書館にでも行って、課題を早々に済ませてしまおうか。
あそこにはまだ行ったことがないから、道筋を探しながら行ってみよう。
きっと退屈はしない。

そう思い、イベリスは必要なものを抱えて何事もなかったように寮を出た。


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