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「私はね、ずっと伯母夫婦の家にお世話になっているの。」

「え、……?」



やれやれ、何でこんな話をすることになったのやら。
窓の外の景色を眺めながら、イベリスは自身の話をし始めた。







「母方の伯母でね、生粋のマグルなの。魔法界のことは、正直毛嫌いする人たちだから
 証明書が届いたときは燃やしてしまったわ。」

「そ、そんなぁ?!」



まぁ、燃やしたのは自分だが。



「それでもしつこく手紙が届いてね。気味悪がって、片っ端から伯父が燃やしていったんだけど
 とうとうそれも追いつかないくらい大量に届くようになったの。
 最終的には伯父達も精神的に参ってしまって、一時住まいを移すまでになっちゃった。」



魔法界の郵便は怖いわね、と苦笑して少年に視線を戻すと
彼も若干引きつっていた。



「私は、正直自分がこの学校に来ることになるなんて思ってもいなかった。
 もうマグルの世界で学校にも通っていたし、伯母夫婦は私がここに通うことを許可してくれそうになかったから。
 だから、私の意志で入学はしませんって、学校側に伝えたの。」

「そうしたら、学校の関係者がわざわざ説明に来てしまって。
 魔力のある子供はその扱い方を学ばなければいけないって言われたの。
 でなければ、いつか魔力が暴走して危険なんですって。」



私の場合、保護や監視というもっと重要な意味合いが含まれているようだけど。



「父が魔法族で、母がマグル。そして二人ともホグワーツの卒業生。そのことを知らされたのも、そのときが初めてだった。」

「……お父さんお母さんのこと、ずっと、知らなかったの?」

「伯母夫婦はなにも言わなかったし。ずっと聞いてはいけないものだと思っていた。」

「どうして?!」



少年が勢いよく立ち上がったせいで、ひざの上にいたカエルが落ちてしまった。
だが今の彼はそのことにかまっていられないらしい。
ちょうどその時、ガラッとドアが開いた。



「こんにちは、お嬢ちゃん、坊ちゃん。車内販売はいかが?」

「はい、何かお腹にたまるものはありますか?」

「それならカボチャパイはどうかしら?他にも色々なお菓子があるから選んでみるといいよ。」

「なら、そのカボチャパイを二切れと紅茶を。あなたは?」

「ぼくは、いいです……。」



うつむいてしまった少年に苦笑して、品物を受け取り料金を払う。
すると社内販売のおばさんは再び戸を閉めて隣のコンパーメントへといってしまった。
座席に戻って買ったばかりの紅茶を一口、口に含むとさわやかなアールグレイの香りが鼻を通る。
意外と冷えていておいしかった。



「ごめんなさいね、不快な思いをさせてしまって。
 お互いあったばかりなのに、なんだか重たい話になってしまったわね。」



そういえばお互い名のってすらいなかったことに、今更気がついた。



「ううん……、僕のほうこそ。大きい声を出してごめんなさい。
 あと、僕の名前はネビル・ロングボトム。そういえば名乗ってなかったね。」



ああ、だからか。



彼の名前を聞いて、そう思った。
何故自分が家族の事を話題に出したのか。
彼は、確かいわゆる『もう一人の男の子』。
無意識に親近感でも沸いてしまったのかもしれない。
だとしたら本当にこの子には申し訳ないことをした。

最近色々あったから、疲れたのかもしれないと自嘲しながら自分の名前を名乗ることにする。



「はじめまして、Mr.ロングボトム。私は イベリス・ポッター。」







『コノ世界』に紛れ込んでしまった、異分子です。







私の名前を聞いて、はっと息をのんだ音がやけに耳に残った。


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