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結論から言うとガトーショコラは非常に美味しかった。
だが、流石にあの量を2人で食べきるには無理がある。
結局三分の一すら食べきれず、早々にギブアップを申し出た。
セブルス・スネイプは顔色を悪くしていた。

実は、この馬鹿でかいデザートプレートはパーティー用の特別なもので、
普通のものは、これの十分の一の量なのだそうだ。

なんてはた迷惑な。



「アハハ!本気でコレ全部食べるつもりだったの?」



そういって爆笑するベゼル・ヘルゼインに呪文が飛んだとしても、文句は言えまい。
(ただし、すでに承知の展開だったのか、あっさり防御呪文で防がれてしまった。)
学生時代から、この2人の関係は変わらなさそうである。



「後は、杖だけだろう?」

「…ああ、それが終わったらこの子をロンドンの駅まで送らねばならない。」

「ふーん。あ、僕も行っていいかい?」

「付いてきてどうする。自分の仕事をしろ。部下が泣くぞ。」



エー、だって部下たち可愛くないんだもん。

……この万年問題児が、他人に迷惑を駆けるな!



なんだろう。
この2人の会話、面白い。

一度言い始めたら聞かないヘルゼインに根気負けしたのか、
本当にそのまま買い物を共にする事になった。
彼はカフェのマスターであるダンテさんに2・3時間で戻ると伝え、
そのまま一緒に外へ出た。

余談だがここ、カフェ『一つ眼』はベゼル・ヘルゼインが副業で始めたものらしい。
ノクターンに店を構えているにもかかわらず、通りで何も言わないわけだ。
知る人は知っている、隠れ家的なお店なのだそうだ。
こんな変人がお店のオーナーだが、結構人気があるらしい。
きっと従業員が優秀なのだろう。



「さぁ、とっとと用事を済ませてしまおうか!」

「……はぁ。」



面倒な事になったと溜息をつく彼を追いかける。
すると、ふと思い出したかのようにスネイプは後ろを振り向いた。
当然、イベリスと目が会う。
なんだろう、何かいい忘れたことでもあるのかなと、イベリスは首をかしげる。
そこへすっと差し出された手。



「先程の二の舞になるわけにも行くまい。」



スネイプがそういうと、隣のヘルゼインがクスクスと笑う。



「来なさい、―――― イベリス。」



不意打ちだった。



(名前、呼ばれた…)



名前を呼ばれることが、こんなにも嬉しいことだっただろうか?

近くに寄っても差し出されたままの手を見て、その手に自分の手を重ねる。
今度ははぐれないようにと、彼の手をそっと握った。

随分と冷たい手だったが、わずかに握り返してくれたことが嬉しくて、



(わぁ、イベリスちゃん嬉そぉー……)



緩んでしまった自分の顔に気付かず、
それを隣の変人がほほえましそうに見ていたことにも気付かなかった。


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