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「そもそも君と彼の関係って何なの?」

「ていうか、今更だけど、君名前は?」

「あ、僕はベゼル・ヘルゼイン。彼とは同級生、同寮、同室だったんだ。
 君もホグワーツだろう?」



などと質問攻めにされながら、お手をどうぞと手を差し伸べてくれるヘルゼイン氏。



(うさんくさい……)

「あ、今、僕のこと胡散臭いとか思ったでしょう。」



ひどいなぁ、善意なのにー

私が手を取りそうにないと分かると、そのまま素直に手を引っ込めた。
それを確認して、私はいい加減自分で立ち上がる。
傷がチリリと痛んだ。



「泣かないんだねぇ、傷痛そうなのに。」



通行の邪魔になるだろうと道の脇へと移動すると、何故かヘルゼイン氏も付いてくる。
この人、暇なのか?



「追いかけないの?ここで待つつもり?」



チラリと視線をやるが、相変わらず愉快そうな顔をしている。
どうやら、私は彼の観察対象として興味が尽きないらしい。



「でも、彼の事だから、ここにいても迎えに来そうにないよねぇ。」



更に人の不安をあおるような事を言ってくる。
反応を見て楽しみたいだけなのだろうか?
だとしたら、この人悪趣味だ。



「どうするんだい?あ、そうだ。君、学用品を揃えに来たんだろう?
 僕が案内してあげようか?」



うつむく顔の前に再び差し出された手。
隣に立つ彼の顔を見上げる。
気紛れに、ものめずらしい、素性の知れない子供相手に何故そのような申し出をするのか。
真意はつかめないが、きっと動機は酷くくだらないものなのだろう。

見上げた先の、その目に宿すのは、幼い子供のような、残酷なまでに純粋な好奇心。

そっとして置いてくれればいいものを。
そう思いながら、首を横に振った。



「迷子の時の鉄則、知っていますか?」

「……ん?」

「はぐれた場所から動かない事。動いてしまったら、お互い見つけられないでしょう?」

「……」

「私は、ここで待ちます。まぁ、本当に迎えに来てくれなかったら、一人で何とかしますよ。」



でも、きっと来てくれますから。



「……変な子供だね。きっと来てくれるだなんてそんな確証、いったいどこから来るんだい?」

「確証なんてありませんよ。」



確証云々の前に、来てくれる事を信じて待つしかないというのが正直なところだ。
期待を裏切られたとしても、もしかしたらとまた期待する。
そうやって、何度も裏切られ、落ち込み、同じことの繰り返し。



「それでもと、すがってしまうのが人間でしょう?」



嫌になるくらい、同じ過ちを繰り返す。
それが人間だと、前世で誰かが言っていた。
ああ、確かにそうかもしれないと、今世で納得するのも酷く不思議な感じがする。



「君、本当に10歳かそこらなのかい?そんなことを君みたいな子供から聞くことになるなんて、世も末だね。」

「ああ、確かに、今のは子供らしくなかったですね。」

「そういえば、まだ君の名前を教えてもらってないんだけれど。」

「見知らぬ人に個人情報を教えてはいけませんって、家の人に言われてます。」

「オイオイ、今更子供の振りなんかしなくても良いだろ?逆に違和感があるね。」

「違和感を感じられるほど、普段の私のことまだ知らないでしょう?」



ああ、それもそうか。

クスクスと上品に笑う目の前の人は、言ってはなんだが、かなり人目を引く。
なまじ見目麗しいだけに、効果は抜群だ。



(セブルスさん、早く見つけてくれないかなぁ……)



無駄とは知りつつも、セブルス・スネイプが消えていった方向に目を向ける。

色の洪水のなか、唯一の色を持つ彼の人は未だ見えない。


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