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※流血・グロテスクなシーンの表現が含まれております。苦手な方はご注意ください。
灰色のレンガ
薄暗い路地
気持ち悪いくらい青い空
むせ返るくらい、甘くて、苦い、香り
「 ……いやいや、なんの冗談? 」
足元の黒い水溜りは ―――――― 血?
胃の中身が逆流を起こすような感覚。
内容物が反旗を翻したようにのどを競り上がってくる。
しゃがむこともかなわず、そのまま前のめりになって異物を戻した。
「 ――――― ゲ、ホッ、ゲホッ 」
何?
なに、
なんなの?
何なのだろう、
このやけにリアルな白昼夢は。
日ごろの疲れのせいなのだろうか?
ビチャッ と耳によろしくない音が嫌に響く。
音の根源に目をやると、
壁一面に、
無造作に、
無秩序に広がる、
黒い影
「 ――――― ?! 」
思わず距離をとろうと飛びのく。
そのたびに、足元ではビチャビチャと黒い飛沫が上がった。
嫌だいやだイヤだ嫌だ
とにかく、ここから離れなければと、なけなしの冷静さを振り絞って、地面を蹴る。
だが、すぐに異変に気付いた。
「 ――――― っ! フギッ 」
気付くことは出来たが、体のほうはうまく反応してくれない。
何かに足をとられるようにして、はでにすっ転んだのである。
眼科の血黙りにとび込む形になり声にならない悲鳴があがった。
なんで、自分の服がぶかぶかなのか。
なんで、こんなにも血であふれかえっているのに周りに人っ子一人いないのか。
どこにいるんだ自分は。
どこに向かって走っているんだ。
浮かんでは消えていく、もはや意味など成さない自問自答を繰り返しながら足が上がらなくなるまで走る。
時間にしてどれくらい走っていたかはわからないが、暗くじめじめした路地の雰囲気は変わることがない。
もうダメ、と力なく座り込む。
先ほどから耳が痛いくらい自分の心臓の音しか聞こえない。
誰でもいい。
本当に。
だから。
「 誰、か 」
「 助けて、ください 」
目をぎゅっとつぶり、耳を両手で押さえ、
なんでもいい、
はやく、はやく、
すべての感覚を拒絶して遮断して排除して
だから、気付かなかった。
背後にそっと寄り添うようにたたずんでいた存在に ―――――
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