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昔の回想をしている間に郵便館に到着。まだ明かりが点いている事からセーフのようだ。
フロントにそっと入りなるべく見つからないように仕分けの所へ行く。副館長を連れ戻してきて無いのに館長に見つかったら何を言われるか分からないからだ。
無事テガミを指定の箱へ滑り込ませて玄関まで戻ってきた。これで自分の寝床まで帰れれば今日の任務は終了。なんの懸念も無く眠れる。
そう思っていたのだが、それは後方からかけられた声に阻まれた。

「こんな時間にどうした。忘れ物でもしたのか?」

「ゲ……」

もう条件反射だ。彼が来ると眉をひそめてしまう。例えその原因が冤罪だったとしても、一度覚えてしまった苦手意識と恨みは簡単に拭えない。サンダーランドJr.に対する態度が改善されるのはまだまだ先だろう。

「そうそう、テガミ一つ忘れたんだよ、ね?」

背後からひょっこり現れたレイジー。あれ、お前確か博士と喧嘩してたんじゃないのか?

「……レイジー」

「はいなー?」

オレの事を下から伺うようにしていたレイジーがパッと博士に向き直った。その瞬間、博士はレイジーの後ろから手を伸ばすように腕を回しこみ、その首筋に注射器を刺した。
……早っ。

「はれ?」

レイジー笑みを崩す間もなく、あっという間に眠りに落ちた。オレは力の抜けたその体を慌てて支えた。

「なんか……睡眠薬強くないっすか?」

「今回は特別だ。時々注射を打つのを嫌がる素振りをしてな、そういう時だけ使う」

「へぇ、レイジーが何かに嫌がるなんて想像できねぇ」

腕の中で無表情の寝顔を晒すレイジーを改めて見てみる。コイツが何かを嫌がるなんて行動は見た事が無い。……ああ、一度だけあるな。

「そう言えば最初の時嫌がられたか」

初めて二日かかる配達をした時、銃を向けられたのは印象深い。吃驚して体が動かなかった程だ。

「お前……」

「は?」

呼ばれて視線をレイジーから博士に移す。何故か彼はとても驚いた顔をしていた。

「心弾銃、は……受けていないようだな」

「ああ、銃口は向けられたけど。何、コイツの心弾そんなにヤバイの?」

「……まぁ、正直受けたくは無いな」

博士は、すやすやと眠っているレイジーを軽々持ち上げて背負った。

「配達で疲れただろう。早く寝て明日に控えろ」

話はこれで終わりだと言わんばかりに博士は奥へと消えて行った。残されたオレは数瞬呆然としてから、先程までレイジーを支えていた自分の手を見やった。

「……見た目より軽かったなぁ」

不思議と、レイジーの心弾についてはさして気にならなかった。


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