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「ほお『協奏曲(コンツェルト)第17番』か。珍しい物持ってるな」

ラグの銃を見た後、ゴベーニさんがレイジーの銃を見て感心そうに言った。
パンをくわえたままそちらを向くと、丁度レイジーが自分の心弾銃を取り出して見せている所だった。

「手入れも丁寧だ。レイジー、と言ったか? コレ何処で手に入れた?」

「えへへー、秘密ー」

「はは、そうかい。いやそれにしても今日は運が良い! 珍しい心弾銃を二つも見れたんだから」

まじまじとレイジーの心弾銃を見るゴベーニさん。
途中何かに気が付いたのか、銃からレイジーに視線を移した。

「薬莢が切れてるな。どうする? ここで買ってくか?」

「うんにゃ、だいじょーぶです」

「そうか……よし! 特別に大特価でメンテしてやろう。良いもん見せてもらったお礼だ」

「ありがとうございますー!」

え、それならオレもその大特化でメンテして欲しい。

「仕方ねーな。今日だけだぞ」

案外気前の良いおっさんでラッキーだった。





メンテを安くして貰い、挙句(二回目の)夕食もご馳走になって内心ホクホクのオレ。心なしか艶がかった自分の銃に見とれながらシナーズを後にする。
一通り見た自慢の散弾銃をホルダーの中に仕舞おうと、邪魔になったカバンを退かす。その時ひらりと何かがカバンの中から落ちた。

「あ、やっべ」

それは、集荷したが郵便館に納め損なったテガミだった。

「どうしたのザジ?」

「あー、ちょっとヘマした。オレ郵便館寄って帰るから」

コナーの質問は適当に返してオレは隣にいるレイジーに目を向けた。

「確か郵便館で寝泊りしてたよな? 一緒に行こうぜ」

「おぅともよ!」

「え!? レイジーさん郵便館に住んでるんですか!?」

ああ、そういえばラグは知らなかったか。

「そうそう、サンダーランドJr.んとこにな。じゃ、また明日」

「バイバーイ」

後ろに向けて手を振りながら言えば「えー!?」というラグの声が聞こえた。うん、オレも最初は驚いた。

「よく解剖されないよなお前」

「えへへー」

「ま、Jr.がレイジーを解剖しようとする所なんて想像できないけど」
郵便館に行く途中、サンダーランドJr.のレイジーに対する態度を思い出した。あれは多分、レイジーと二度目に組んだ仕事の後だった。初めてレイジーに注射をするよう言われた件の仕事だ。





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レイジーと二度目の配達は、滞り無く終わった。いや、朝になってもレイジーが中々起きなかったという事はあったが。

「……って、またいねぇし」

この前も思ったが、アイツは報告の時になるといなくなる。一度目は仕方なしに一人で報告を行ったが今度はそうはさせない。

「先輩なんだかどうかは知らないけど、オレ一人に報告させるのは気に食わねえ」

というか本来は先輩であるレイジーが報告をすべきではなかろうか。

「ヴァシュカ」

相棒である黒豹に一言かけると、了解というように鳴いた後一直線に階段を上って行った。





着いた先にあったのは、負傷したBEEの治療などをする、言わば保健室のような所。……アイツ、怪我なんてしたっけ。
ノックもせずにドアを開けると、そこには見覚えのある白衣の男がいた。

「あ」

「ん?」

思わず声を出してしまった。それに気付いた男、サンダーランドJr.が振り返った。

「君か……」

振り返った時、彼の体だ隠れていた場所に、捜し人であるレイジーが眠っているベッドがあった。

「報告は済んだのか?」

「いや、報告すんのにそいつ捜してたんすけど」

「ああ……すまないがレイジーと配達した時は一人で報告してくれ」

「は?」

「館長には事前に言ってある。聞いてないか?」

「全然……」

そんな事初めて聞いた。何か腑に落ちなくてジト目でレイジーを睨む。と、視界に驚くべき物が映った。
あの解剖にしか興味が無いんじゃないかとさえ言われているサンダーランドJr.。そいつがレイジーの頭を優しく撫でていたのだ。思わずその場に固まった。

「どうした少年? 報告しに行かないのか?」

「あ、いや」

「解剖の実験体に立候補してくれるのなら報告の後に来い」

「丁重にお断りさせて頂きますっ!」

思わぬ爆弾発言に慌ててドアを閉めて館長室へ急いだ。

ドアを閉める直前、Jr.がレイジーを労わるようにそっと毛布をかけ直していたのを見た。明日は雪が降るんじゃなかろうかと思ったが、一生口にはしないだろう。





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