08
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配達を終え(ついでに集荷もして)郵便館へ帰る。
郵便館に帰るとレイジーはすぐにふらふらとどこかへ行ってしまうので報告はいつも一人。
最初こそは怒った物だが、今ではそれも馬鹿らしくなってそのままにしている。
館長達もそれはいつもの事らしく何も言って来ない。
「ってか今日は館長だけなんすね」
報告を終えて、気になっていた事を聞いてみた。
とは言っても館長は一瞬止まっただけでまた作業を再開した。
いつもより明らかに多い書類の山に思わず合掌してしまいそうになるのはしょうがないだろう。
「いやぁ、アリア君は……多分シルベット・スエードの所かなぁ」
「スエード妹の所?」
「そう。あ! 丁度良い! アリア君に戻って欲しいと伝えに行ってくれないかい?」
「え?」
「シルベット・スエードは共同住宅(フラット)のカシオピイア・ランプに住んでるから」
「へ? はい?」
「それが終わったら今日は仕事終わりって事で。じゃ、頼んだよ」
凄い手際で部屋の外に押し出されて扉を閉められた。
断る訳にもいかず、渋々言われた所に行く事に。
なんだってこんな時に帰館してしまったのだろう……。
「館長も人使いが荒いよなあ」
「今に始まった事じゃなーい」
「うおあ!?」
急に肩口から声が聞こえて文字通り飛び上がった。
「レイジー!驚かすなよ!」
「あははははは!」
まだ大げさに脈打つオレの心臓なんか気にもせず、レイジーは大笑いする。
んの、他人を馬鹿にして……!
「……お前今日はどうしたんだ?」
ふと違和感に気付いた。
いつもなら帰ってきたら次の日になるまで会える事は無いのに、配達を終了してから会うのは初めてだ。
「逃げてきた」
「は?」
「注射から。ハントさんもいたよ」
ああ、Jr.か。
注射嫌いは以前の経験から実証済み。
普段なら逃げるなんて事は無いが、今回は本気で嫌がったようだ。
……本気で嫌がったレイジーの姿が思い浮かばねぇ。
ただ単に面白半分に逃げ回ってただけと言われた方がしっくり来る。
なんだ? Jr.と喧嘩でもしたか?
「ザジは何処か行くの?」
「ああ、副館長連れ戻してくれって館長から言われて。お前も来るか? スエード妹の所」
「行く!」
右手を高く上げて何時もの通り元気一杯に振舞うレイジー。
喧嘩の線は無さそうだ。
暫く歩いていくと、ラグのBEE認定審査以来の家が見えてきた。
共同住宅のカシオピイア・ランプだ。
「ザジー」
「ん?」
「何だろねコレー?」
「……パンツ?」
何故玄関先にパンツ?
しかも男物だからラグのか?
いや、物好きな誰かが置いていったってのは……無いか。
「あっはははははは!」
「ちょ、おま、今何処につぼった!?」
いきなり笑い出したレイジー。
微妙なタイミングなので突っ込んでしまったが、コイツに突っ込み出したらキリが無い事をオレは知っている。
「あの〜どちら様、ってザジ!とレイジーさん!?」
レイジーに笑い声を聞きつけたのだろう、ラグがそろりと中から出てきた。
「ようラグ、丁度良かった。コレお前のか?」
レイジーがいまだ手に持っているパンツを指差しながら聞いてみる。
手に持ったまま地面を叩いて笑っているのは見ないフリ。
「え、あ!これ!」
「あ、やっぱお前のか?」
「ニッチのパンツだ!」
「…………」
ニッチって、女だよな?
え? デカパン?
お前まさかそういう趣味?
取り合えずオレは、ラグの返答を聞いて更に笑い転げたレイジーを軽く叩いておいた。
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