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兄と妹、つまりティアとヴァンの確執を巡った言い争いは最後までどちらも妥協しなかった。そんな宿屋の一風景を終えて、彼らはカイツールのキムラスカ側へ渡った。
しかしカイツールを抜けた先にあるカイツール軍港にて事件が起きた。再びアリエッタの強襲である。船の技師を人質にとり、彼女が要求したのは導師イオンとルークの二人がコーラル城へ来る事。色々あり、ヴァンからは止められていたが、結局全員でコーラル城へ行くことになった。
辿り着いたコーラル城は流石にもうファブレ家の別荘だった面影はない。

「にしても、俺がここで発見されたなんてなぁ」

「何か思い出さないか?」

「いや、なんも。別に困ってねーから思い出さなくても良いけどな」

「お前のそういう所は尊敬するよ」

ガイとルークの会話を横目に、エドガーはコーラル城を見上げた。ずっと放置されていたにしては門扉から玄関までの道は踏み均されていて苔ぐらいしか生えていない。明らかに誰かがいる、あるいはいた形跡がある。エドガーは例の如く「面倒そうだ」と心の中で呟く。
城の中に入っても、人の手が入っている様子は見受けられた。ボロボロだが比較的新しい対侵入者用の譜業と、埃が被っている所といない所の差、終いには謎の大型音機関。人質の船技師探す為にコーラル城へ来た一向だが、この音機関には皆が驚いた。しかし、ガイの女性に対する過度な反応を目の当たりにして、音機関に対しては保留という事になる。
さらに奥へ行くとアリエッタが飼っている魔物が屋上へ上るのが見え、皆がそれを追いかけ始めた。

「おい、罠かもしれない、ってエドまで!?」

我先にと階段を駆け上るルークとそれを追いかけるイオンとアニス。その後を追いエドガーも走り出した。
なんて事は無い、彼の保護対象であるルークが行ってしまったのなら彼がそれを追いかけるのは当然だ。だが一歩遅れて屋上に上がったエドガーは小さく舌打ちをした。ルークが既に鳥型の魔物に捕えられたからだ。

一瞬、エドガーは躊躇した。

しかしその一瞬はなんの弊害も無かった。ホルスターに装備されていた譜銃二丁を両手に掴み、照準を魔物に合わせる。

「アリエッタの友達傷つけたら、この人殺すです!」

示されたのは人質の船技師。

一瞬、エドガーは躊躇した。

しかしこれもただ一瞬の出来事で、エドガーはそのまま引き金にかけていた指に力を入れた。

「エドッ!!」

ルークが、彼の名前を呼んだ。

ルークの顔を真正面から見たエドガーは、もう一度躊躇した。

一瞬が三度続いた。本来ならまだこれでも修正がいっただろう。しかしエドガーはルークの表情を見て目に見えて身を固めた。目を見開き、今までの『一撃必殺』の攻撃スタイルに迷いが生まれた。
六神将を名乗る妖獣のアリエッタがそれを見逃すはずもなく、ライガに攻撃を指示する。電撃の気配にエドガーは我に返り防御を行うが、その隙にルークが他の六神将の死神ディスト連れて行かれた。

「……」

エドガーは沈黙のまま役目を果たせなかった譜銃をホルスターにしまった。他の面々も屋上に到着して、エドガーは自分の失態を垣間見せたことになる。

「珍しいな、エドガーが敵を取り逃がすなんて」

この面子の中で一番エドガーの戦闘を見てきたガイがそう呟いた。エドガーはそれには答えず、顔を伏せたまま振り返り「ルーク様を探すのだろう?」と言って階段へ向かって足を進めた。
その時の彼の表情を見た者はいなかった。見たとしても、いつも以上に無表情というだけであっただろうが。ルークが見たら、そう受け取らないかもしれない。


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