姫様方の優雅な一時

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それはそれは麗しい二人のお姫様。
一人はふわふわとした髪質の、もう一人はウェーブ掛かった髪質のお姫様。

そんな二人が民間のカフェで一緒にアフタヌーンティーを楽しんでいれば、周りの視線が集まらない筈はない。

「でね、キタンたらまたシモンを怒らせたみたいで」

「まあ、キタンさんたらまたそんな事を?」

「ええ、そして案の定」

「残業してしまったのですね」

「その通り」

話の内容は、先日町中に轟いたある男の悲鳴の真相について。
心なしか聞き耳を立てていた他の客も、話の内容が総司令の事となると“ああ、またか”と溜め息をつく。

「シモンもつまらない事で怒らなければ良いのに」

「……スピカはシモンが怒った理由を知っているのですか?」

「いいえニア、私は知らないの。……でもしょっちゅう怒っているという事は日常的な事に不満を感じているという事でしょう?」

「(十中八九スピカ絡みだと思うのですけれど……)そうですね、日常的な事です」

「え?」

「何でもありません。それよりもスピカ、以前行ったお店で新作のワンピースが出ていたのですけれど」

「本当!?」

何気無く話題を変えるのはニアと呼ばれたふわふわとした髪の女性。
彼女の胸中の言葉を汲み取れた者は誰一人としていない。

「ええ、一緒に行きませんか?」

「勿論!楽しみだわ」

まだ見ぬお気に入りの店の新作に思いを馳せるスピカの笑顔に、自然とニアも笑みを溢す。
その一部始終を見ていた他の客並びに店員は、この時ばかりは頬を綻ばせて「今日ここのカフェにいて良かった」と思うのだ。

「いつにしましょうか?」

「いつと言わずに今日にでも」

「うーん、それもそうね。売り切れちゃうかもしれないもの」

「それもありますけれど……」

「?」

「……何でもないです、行きましょう?」

「(?変なニア)ええ、そうね」

またしてもニアの思った胸中の言葉を汲み取れた者はおらず、周りの者の落胆するような気配を尻目に二人はカフェを出て行った。

「楽しみねニア」

「そうですねスピカ」

ゆったりと歩くその様はまさしく貴族の優雅さを醸し出しており、先程ニアが何か言いかけたと言う事実も忘却の彼方へと飛んでいった。




















「それもありますけれど、そうでもしないとシモンがついてくるでしょう?」

のみ込んだ言葉とは、女の子同士の時間を邪魔されたくないと言うささやかな独占欲。


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