tribute

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最近スピカが構ってくれない。

確かに、普段生活している際には変わった事は無い。
おはようのキスもいってらっしゃいのキスもお帰りのキスもおやすみのキスも変わり無くしている。(あれ、キスばっか…)

でも最近はふとした瞬間いつも隣にいた彼女が自室にこもっている。
どうしたのだろうと思って部屋に入ろうとすると、スピカは慌てて俺を部屋から押し出すのだ。
直接聞いても笑顔ではぐらかされてしまう。
いや、スピカの笑顔ではぐらかされない方が可笑しいだろう。

は!まさか俺に魅力を感じられなくなって浮気!?
いやまさかそんなはずはでももしかしたらうんたらかんたら。
考えるのも嫌になったので違う視点からスピカの真意を探る事にした。

「という事でキヨウ、俺の魅力って何?」

「何が『という事で』なのかは分からないけれど、スピカと何かあったことは分かったわ」

即刻バレた!?

「だってシモンがそんな顔するのはスピカ絡みだもの」

にこりと大人の笑みに返す言葉もなく、取り敢えずどんな顔か聞いてみる。

「世界の終わりが迫ったような顔。ああでも貴方の場合そんな事になったらどうにかして止めようとして実際止めてしまいそうね」

「……えーっと?」

「つまり貴方らしくない顔」

スピカ相手なららしいっちゃらしいけれど。
そう言いながらキヨウはクスクスと笑う。
因みにキヨウの後ろではキヤルが腹を抱えて笑っている。
俺が最初の質問をしてからずっとだ。

「質問の答えがまだだったわね。シモンの良い所と言えば、そうねぇ「単純バカな所に決まってんじゃん!」

キヨウの言葉を遮って、先程まで笑い転げていたキヤルが言い放った。

「あらキヤル、ダメよもっとオブラートに包んで言わなきゃ」

追い討ちをかけられた。

「……俺ってそんなに単純バカ?」

「その物言いからすると、既に誰かから聞いたような口振りね」

キヨウの言う通り、俺は色々な人に同じ質問をしていた。



曰くキタンは、

「そりゃお前、バカなところだろ」

一発殴っておいた。



曰くダヤッカは、

「真っ直ぐな所じゃないか?」

それを言うまでの間が気になった。



曰くリーロンは、

「いつも前を見ているとこかしら?足下が疎かになりがちだけど」

言い返せなかった。



曰くキノンは、

「そんな事言ってる暇があったら総司令室に行って下さい」

足を止めてくれる事すらしてくれなかった。



曰くロシウは、

「そんな事言ってる暇があったら仕事して下さい」

書類タワーを手渡された。



皆俺を誰だと思ったやがる!
と叫びたかったが寸でで抑えた。
これを言うのは今じゃない気がする。
そして今度はキヨウとキヤル二人に笑われた。

「良いじゃない、前向きなのは良いことよ?」

目尻に涙を浮かべながら言われても……。(爆笑的な意味で)

「ばっかだなーシモンは!そんなに気になんなら本人に聞けば良いのに」

キヤルにそう言われて、はたと気付いた。
この際だ、二度も馬鹿と言われた事は目を瞑ろう。
そうだ、なんで本人に聞かなかったのだろう。

「サンキュ二人とも!そうだな、聞いてみるよ!」

俺は急いで玄関へ向かい、ドアを開け放ってスピカの元へ急いだ。



* * * * * *



「スピカ!君に聞きたい事が……」

「お帰りなさいシモン!今日は見てほしい物があるの!」

家に帰ってみると、俺の質問もお構いなしにスピカがぐいぐいと俺の腕を引っ張って中に引き入れた。
出端を折られてしまい、聞くタイミングを逃す。
リビングまで連れてこられ、スピカに手渡されたのは綺麗にラッピングされた箱。

「これは……?」

「良いから、開けてみて頂戴」

ニコニコと笑うスピカ。
若干ドキドキしながら紐をほどき、中を見る。
そこにあったのは青を基調とした羽織のような物で、胸元に三つ星、総司令の証が刺繍されている上着だった。

「いつもお仕事お疲れ様。私が内職で稼いだお金で買ったの。絶対シモンに似合うと思ってね」

お茶目に微笑みながらスピカが言う。
ああ、だから最近そわそわしていたのか。
きっとキヨウやキヤルは知っていたに違いない。
だからあんなに笑っていたのだろう。
考えて見れば他の面々も知っていたようだ。
視線が皆して呆れていたし、ロシウに至っては珍しく定時に帰してくれた。
多分スピカに頼まれでもしていたのだ。

手に持った上着を、急かされるままに着る。
サイズはピッタリ、着心地も最高。
何よりもスピカからのプレゼントだ。
喜ばない訳がない。

「ありがとうスピカ、凄く嬉しいよ!」

「ふふ、喜んで貰えたなら良かったわ」

悪戯が成功した時のような顔をしたスピカ。
何もかもが愛しくて、思わず上着が皺になるのも忘れて彼女を抱き締めた。

抱き締め返してくれた腕に舞い上がったのは言うまでもない。



贈り物とは嬉しいものだ。



(そうそう、これはロシウからよ)

(……そう来たか)((大量の書類))


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