凱旋

-----------------------

本日も日和は良く、忍術学園事務員の小松田秀作は玄関の掃除をしていた。見上げれば青空が広がる。昼間という事もあり照りつける太陽の光は眩しい。
その眩しい中にいつもとは違う違和感を見た。

「あれ?」

小松田秀作は元来学園内への侵入者には敏感である。その彼の目を盗んで忍術学園に忍び込むのは大変骨が折れる。例に漏れず、今回の侵入者もこの時見つかった。
しかし、侵入者を見つけたにも関わらず小松田はその顔に笑顔を表した。侵入者に対しての表情ではない。それは、彼が常日頃から侵入者に対しても入門票への記帳をさせているからではない。

「わー! おかえり幸三郎君!」

「あれー今日こそは小松田さんに見つからないと思ったのに」

青空を見上げて見つけた対象は、悔しそうに苦笑いする少年。
姓は尾張、名は幸三郎、齢15。そして彼は、

「忍術学園六年は組尾張幸三郎、只今凱旋致しましたよっと!」

忍たまの一員である。





今日は快晴。授業の終わった忍術学園の生徒たちは各々の宿題をこなしていたり鍛錬に励んでいたりと様々だ。
その中でも忙しいのが、委員会に参加している者達。しかし、それにも例外がある。
『学級委員長委員会』
この委員会のみは何をするでも無く取り敢えず集まっているだけという自由な所だ。そんな集まるだけの委員会は、今日も今日とて自分の好きな事をやっている。
ある者は宿題をし、ある者はお茶をくみ、ある者は団子を食い、またある者は自分の変装に必要な面を作る。
そんな場所に1つの変化が起きた。

― スパンッ ―

「ぃよう! 元気か?」

障子を思い切りよく開けてそう言う人は、先ほど学園長や先生方に挨拶して回ったばかりの尾張幸三郎その人である。室内にいたのは、学級委員長委員会に毎回参加している数少ない人物たち。
五年い組尾浜勘衛門。
五年は組鉢屋三郎。
一年い組今福彦四郎。
一年は組黒木庄左ヱ門。
この4人、急に現れた人物に対しての反応が皆一緒だ。全員目を丸くして呆けている。
一年生の心中は容易に想像できる。なんていっても彼らは尾張幸三郎と初対面なのだから。

「なんだよもー、久しぶりに会った先輩に何も無いのか?」

まるで幽霊でも見る様な上級生二人の反応に、幸三郎は呆れたような表情を見せる。その彼の言葉にピクリと反応したのは、五年は組鉢屋三郎。座っていた鉢屋がゆっくりと立ち上がる。

「お、鉢屋か。どうだ、元気か?」

ニヤニヤと仁王立ちのままに、ゆらりと歩み寄る鉢屋をただ見つめる。その様はとても楽しそうだ。
そう、楽しそうなのだ。縹刀を携えた鉢屋を見ても、楽しそうに、笑みを、深める。


--------------------
ひょう刀のひょう、金偏らしいのだが表示されないorz
なので糸偏で代用してます。


[ ] | []

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -