邂逅

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テッペリン攻略から早3年。
それは同時に彼が死んでから3年が経ったという事を意味する。
小さかった私も今年で17歳になり、あの時から時間の止まってしまった彼と同い年になった。

かつて瓦礫の山だったテッペリンはカミナシティと改名され、目まぐるしい発展を見せている。
街の中央広場には英雄カミナの銅像。この銅像を彫ったのは言わずもがなシモンだ。
そんな彼は来月行われる総司令就任式の準備に追われている。
みんな自分の仕事を、夢を見つけ、それに向かって奮闘しているのだ。

そんな中、私は小学校のお手伝いをしている。
主に何をしているのかというと、カウンセラーと言うのだろうか、まぁ子供たちの相談や一日の出来事を聞いたり、遊んであげたりしているのだ。
前に新政府の一員として働かないかとシモンとロシウが家まで押しかけてきたのだが、それをお断りして今の仕事をしている。

そして今日も授業を終えた子供たちが私の元へやってくる。



「スピカ姉ちゃん!今日ね、先生に誉められたんだ!」

「スピカちゃん、昨日言ってた子と仲直り出来たよ。」

「今日ね、サッカーの試合で最後に俺がシュート入れて勝ったんだぜ!」



年齢は下から上までまちまち。話しの内容も様々だ。でもどの子を見てもみんな笑顔、笑顔、笑顔。
こうゆう環境に置かれて初めて理解した。
カミナとがあの日に言っていた事を。



そう、それは大グレン団が結成された日の事。




















四天王のチミルフとの一回目の戦いの夜。
大グレン団の仲間が集結してお祭り騒ぎをしていた時、カミナが静かにその場を後にした。
それに気付いた私は彼の後を追って茂みの中へ入っていったのだ。



「こんな所にいたの?」

「おぅスピカか。」

「あっちで一緒に騒げば良いのに。」

「今は月を見てぇんだ。」



そう言ったカミナの座っている丘は、彼の大好きな月がよく見える場所だった。
彼の隣まで足を運び、満天の星空を見上げる。
そんな時カミナが口を開いた。



「俺はな、シモンやギミーやダリー、デコ助、ヨーコ、そんでお前が笑ってんのを見てんのが1番嬉しいんだ。」

「見てるだけで良いの?一緒に笑うんじゃなくて?」

「ああ。見てるだけで十分だ。」

「よくわからないわ。」

「まだお前はガキんちょだからな。もう少し大人になったら解るってもんよ。」

「子供扱いは止めてよ。」

「そうゆう所がガキんちょなんだよ。」



そう言って私の頭をカミナが小突いた。
私はそんな子供っぽい自分が嫌だった。
カミナに追い付きたい。並んで歩けるくらい大人になりたい。
ずっとそう思っていたから。



「カミナは、もし私が大人になったら…」

「あ?」

「…ううん、何でもない。」



たかが3歳、されど3歳。だけど14歳と17歳の差は大きくて。
だから、カミナの言っている事を理解できるほど大人になったら、今この胸にある気持ちを伝えようと思っていた。
歳は追いつく事は出来ないけど、一人の人間としてならば追いつく事は出来る。
その時を夢見て私はカミナの隣で微笑んだ。彼が1番幸せに思えるという笑顔を見せて。



なのに。



「歳、追い付いちゃった…」

「スピカ姉ちゃん?」

「ううん、何でもないわ。」



今ならカミナの言っていた事もわかる。
笑顔というものには底知れぬ力があると理解したわ。
こうして子供たちが笑っている姿を見ているだけで私も幸せになれるもの。

ねぇ、私はあなたに追い付けた?

そう問い掛けても答えてくれる人はもういない。
頭を小突いてくれる人はもういない。



「お姉ちゃん、大丈夫?」

「え…?」

「泣いてるよ?悲しい事あったの?」



そう言われ頬が濡れている事に気付いた。
カミナが死んだ日から一度も泣かなかった。
もうあの日で涙は枯れてしまったと思っていたのに。



「まだ、泣けたのね…」



指で涙を掬って太陽の光で輝くそれを見た。



「スピカちゃん、笑って?みんなスピカちゃんの笑顔が好きなんだよ?」



そう言われ顔をあげる。
心配そうに私を見つめる沢山の瞳。
ああ、ダメね。こんな顔をさせてしまうなんて。
太陽のような彼は、どんなに不安な時も悲しい時も泣いたりなんてしなかった。
そう思って目の縁に残っている涙を拭うと一瞬、風が吹いて、子供たちの後ろにカミナの姿が見えた。
あの丘で話した時と同じ優しい、そして自信に満ちた顔で立っている。



「…ごめんね、ありがとう。もう大丈夫よ。」



そう言って子供たちに、カミナに笑いかけた。
あなたが好きと言ってくれた笑顔を絶える事なく続けるわ。
それが私からあなたに出来るせめてもの事だから。

二秒ほど目をつむり、もう一度目を開くと、そこにはもうカミナの姿はなかった。
光の世界に帰ってしまったみたいね。



「ありがとう。」



再度、感謝の言葉を紡ぐ。
春の優しい木漏れ日はひどく温かかった。





(そちらの世界でも笑っていてください。)
(あなたが笑顔なら、私も幸せです。)





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20000hitであひる隊長のサイト管理人、樹里亜様に頂きましたグレラガ夢!
しかも夢主は樹里亜さん宅の看板娘です////
これこそ涙腺突破ガメンミエン。
ありがとうございました!


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