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「この私のスーパーウルトラゴージャスな技を食らうが良い!」

ディストがそう言うと、甲板に巨大な譜業が現れた。移動系統の譜陣を予め敷いていたのだろう。

「大佐殿、取り敢えず確認致します。あれは貴殿方の敵ですか?」

「そうですよ。そう言うわけで護送屋殿、しっかりお仕事して頂けますか?」

「ええ、私は仕事熱心で有名ですから」

言うが早、ナイフを二本取り出してルークやガイがいる前衛に躍り出た。
ルークが双牙斬をして隙が相手にできた瞬間を狙って、譜業の右手の間接にあたる部分にナイフを一つ突き立てる。するとモーターのように回っていた先端の所が鈍い音をたてながら止まった。

「成る程、ナイフを衝立代わりにしたのか!」

「御名答ですよ、ガイ」

反対側の間接にも同じような場所にナイフを投げる。“ガチッ”と言う音と共にそちらも止まった。

「なるべく譜業の間接を狙ってください。壊すまでは行かずとも動きを鈍らせる事は簡単です」

「嘘つけ! そんな狭い所簡単に狙えるかっつーの!」

ルークが相手の攻撃を避けながらそう叫んだ。彼なら集中すれば難なくできそうなのだが。

「あー、では手っ取り早く動きを止めましょう」

仕方がない。私は少し後ろへ、中衛辺りまで下がった。それから助走をつけて走り出す。

「スプラッシュ!」

丁度ジェイドの譜術も当たって譜業の動きが止まった。止まった譜業を踏み台に足から腕、頭頂を蹴って跳び上がる。
狙うは一つ、コントロールパネルを持つディストのいる空中。

「んなっ!?」

「それ、ちょっと拝借致します」

浮遊している椅子の手摺を掴み、コントロールパネル目掛けて片足を振り上げた。

……あ、力加減間違えた。

蹴り上げた瞬間、コントロールパネルは頭上を越えて自分の後方へ飛んでいった。運悪く、パネルの着地点にいたのは温室育ちのルーク。

「っしゃ、任せろ!」

「待てルーク!」

ガイの制止の声も虚しく、ルークはパネルを木端微塵に切り砕いてしまった。

「あ゛ー! なんて事してくれるんですかー!?」

ディストは半狂乱に叫び、ガイは頭を抱え、ジェイドは溜息をついた。

「は? え? なんかまずかったか?」

なんとなく様子がおかしい事に気付いたのか、ルークがたじろいだ。

「すみませんルーク。力加減を間違えました」

「へ?」

ルークは甲板に着地した私の言葉にも疑問符を浮かべる。その間にも空中のディストは拳を震わせ、それから伏せていた顔を上げた。

「そのコントロールパネルは制御装置も兼ねているんです! それが壊れたら私の可愛いカイザーディストRは暴走するに決まっているでしょう!?」

「はあ!? んな事聞いてねーよ!」

「常識ですよ常識! こうなっては仕方ありません……導師イオンだけでも救出して……!」

「エナジーブラスト!」

ディストが喋っている途中でジェイドの譜術が炸裂した。
私はここで主張する。今ジェイドが放ったエナジーブラストは絶対初級譜術では無いと。ディストが遥か彼方まで吹っ飛ばされたのがその証拠だ。

「皆さん落ち着いてください。幸いこの譜業は撥水加工がされていませんので海に落とせば事足ります」

ジェイドはなんて事無さそうにそう言ってのけ、再び第四音素を集め始めた。あたふたしたルークもその言葉に反応し、手にしている剣を握り締めた。ガイは既に譜業と対峙している。水属性の譜術が扱えないアニスも前衛に参戦し、ティアは回復術を作動させた。

自分も前衛に行こうと甲板床を蹴った。しかし途中で方向転換をせざる負えなくなった。
譜業の動きを鈍らせる為に衝立にしていたナイフが、譜業の暴走によって弾けとんだのだ。その二つの剣先が向かったのは、非戦闘要員で今はミュウを抱いて立っている導師イオン。

「イオン様っ!」

導師守護役のアニスが叫んで助けに行こうとするが到底間に合わない。
護送屋の仕事は、対象を無事に送り届ける事。その為には、自らの身も盾にしなければ仕事をこなしたとは言えない。

「っ、セト!」

イオンの声を背に、私は二つのナイフをその身で受けた。一つは右足に突き刺さり、もう一つは左腕に付けていた腕輪型の響律符(キャパシティ・コア)に当たって反転した。しかし当たり所が悪かったらしく、留め金が外れて腕輪が足元に落ちた。

少し、まずい事になった。


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