【君の明日へ】と【君と明日へ(前編)】の続きになります。
※当サイトの小説『手を伸ばす』とも少しながらリンクしております。
高那なりの勝手な自己解釈&自己設定が満載です、EDを若干改変してます。
それでも大丈夫な方のみ先にどうぞ…。
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生きたいと願う事も許されないと思っていた。だけど、もし…許されるなら、俺は。
俺はー…
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……目を開ける。まず見えたのは見慣れた洞窟の、遥か上にある天上。
ゆっくり起き上がる、違和感はない。そのままゆっくり立ち上がる、やっぱり違和感はない。
でも違和感は別のところに有った。目の前に俺と同じ顔の男が居た、今まで俺が憑依していた体の持ち主…グレイ・ギルバート。
「やっと自分の体に戻れたぜ、あのまま押し潰されちまうかと思ったぜ」
そう吐き捨てる様に呟いて背を向けたグレイに俺は叫ぶ。
「グレイ!今まで…本当にありがとう」
グレイは俺の声に振り向かず足を止めないまま左手を黙って上げて応えてくれた。
「なんや…薄情なヤツやな」
ヒューイはそう言ってるけど俺はそうは思わなかった。今まで勝手に体の支配権を奪われて、やっと解放されて…そしてその元凶に声かけられて反応するだけ優しいヤツだと思う。
……ふと、俺に向けられている視線に気づく。その視線の先に居たのはもちろん彼女だった。
「…本当に、本物?」
「……やっぱり違うか…?」
彼女に聞かれてなんだか自信がなくなってきた。
魂も見た目も同じでもやっぱり違うのだろうか、疑われてるし。というか今の俺は“ホムンクルス”だ、“ヒト”ですらないのかもしれない…。
俺は……何なんだろう?
「ううん、スレインはスレインよ」
彼女の言葉で疑心暗鬼していた部分は簡単に吹き飛んだ。そっか、俺は俺でいいんだ…そんな当たり前な事に気づかないなんて。
……そうだ、俺はもう1つ大事な事に気づいた。
また涙が溢れ始めた彼女に向けて俺は両手を開く、それを合図に彼女が俺の元に駆け寄る。
自分の胸にすっぽりと収まる彼女を抱きしめる、もう遠慮しなきゃいけない相手はいない。彼女の腕も俺の背中へと回され隙間を埋める様に強く抱き締め合う。
俺はまだ君にこの思いを伝えていなかった。……やっと言えるよ、俺の気持ち。
「……好きだ、大好きだモニカ…!」
「わたしも…わたしも、スレインが好き…っ」
モニカの体温、声、鼓動…。
モニカの全てを俺自身の体で感じられるなんて、夢にも思わなかった。
彼女の足枷にしからないこの気持ちも伝えられずに、ただ消えるだけだと思っていたから。
だから、生きたいと願う事も許されないと思っていた。だけど、もし…許されるなら、俺は。
「俺はー…モニカとずっと一緒に生きていきたい、ダメかな?」
「……ううん、ずっと…ずっと一緒いて?」
「…ありがとう」
名残惜しいけど腕の力を緩め、感謝の意を込めてモニカの頬を唇を落とす。…正直言うと唇にしたかったけど。
ヒューイとビクトルから嫌に生暖かい視線を感じるからソレは今度に。
『良かったですねぇスレインさん、モニカさん…』
「えぇ…」
「あぁ、ありがとうラミ………えっ?」
聞き慣れた声に思わず答えたけど何で聞こえたんだろう、声がした方を見上げると俺と同じ事を考えていたのかラミィが目を点にしている。
何で俺にラミィが見えるんだ?
考えてみるとココに闇の精霊の力が集まっているのが感じられる。どうしてだ…ホムンクルスになったら精霊使いの力を失うんじゃなかったのか?
茫然としているの俺を見てビクトルとヒューイが満足げに頷き合う。
「ふむ、その様子なら成功だったようじゃな」
「流石やなジイさん!」
「どういう事…ホムンクルスになったら精霊使いの力も無くなるんじゃなかったの?」
俺が聞きたい事をモニカが質問してくれたのでビクトルからの解答を黙って待つ。
ビクトルはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに胸を張る。
「シオンがホムンクルスを使っていたのは精霊使いの力を抑える必要があったからだと言うのは覚えているな?だから頭で勝手にホムンクルス=精霊使いの力が使えない、という公式が出来ていたんじゃ。ソコで逆転の発想をしてみたんじゃよ、シオンがわざとホムンクルスを精霊使いの力が使えないように作っていたんではないかとな」
『うぅ〜んムズかしいですねぇ〜…』
頭を悩ませるラミィ。俺もイマイチ分からないが、要点をまとめると…
「つまりホムンクルスでも精霊使いの力が使える可能性があると思って実験したって事か、でもどうやって?」
「リーダーは精霊使いに多い特徴が何か知っとるか?ヒントはチビッコや」
「え?私…?」
モニカがヒント?……待てよ、確かモニカの父親は…
「そうか!遺伝か!」
「その通り、精霊使いの能力は遺伝されている事がある。つまり精霊使いの遺伝子をホムンクルスに移す事でそれを可能にさせたんじゃ」
「でも一体誰の遺伝子を移したの?」
「そりゃあリーダーのや」
「俺の?ちょっと待てよ、グレイは精霊使いの素質なんて持ってないぞ」
「だーかーらーリーダーの遺伝子を貰ったんやて」
俺とモニカとラミィが首を傾げていると精霊使い長が顔色を変えてヒューイに訊ねた。
「ま、まさか…ダークロード様の遺骨を!?」
「俺の遺骨?どういう事だ?」
「それが先日ヒューイ殿とビクトル殿がダークロード様の墓前に花を手向けたいと言われ、場所を教えたのですが…」
「そん時にちょこーっとリーダーの骨をいただいたんや」
「相変わらず突拍子な事をするわね…」
「ワシもそう思うわい。突然墓参りに連れて行かれたかと思えば墓荒らしをさせられて、挙げ句に訳も分からないままホムンクルスの実験をさせられる羽目になるとは予想もつかんわ」
訳も分からないままって言ったな…今の反応から察するにビクトルはヒューイから俺の事を聞いてなかったのか?
ビクトルからの実験に関する長話を付き合わされてるモニカ(とラミィ)から離れ、ヒューイに近づいて3人に聞こえない様に小声で喋る。
「……ビクトルに何も話さないままホムンクルスを作らせてたのか?」
「そや、リーダーと約束しとったから。誰にも言わんといてくれ…ってな」
ワイって律儀やろ?とウィンクをするヒューイ。
普段はおちゃらけたヤツなのにしっかりしてる時はしっかりしてる…本当に良いヤツだよ、お前は。決して口に出したりはしないけど。
そんな事を考えてる内にヒューイが俺の背中を勢いよく叩く。
手加減してくれよ…本当に痛いぞ、バシッて音してたし。
「よっしゃ!みんなで帰ろ!」
背中を擦る俺を他所にヒューイはまだ長話をしていたビクトルの肩を押しながらトランスゲートに向かって行く。
ラミィもヒューイの肩に座って嬉しそうにコチラに微笑みかけてくれた。
俺も嬉しくなって自然と口元が緩んでいた。ラミィが見えるってやっぱり嬉しい事なんだよなぁ、今までずっと一緒に居てくれてたんだし。
ホムンクルスでも精霊使いの素質を受け継げて良かったよ、本当に。
……うん、なんか視線を感じるな。というか痛い。まぁ誰の視線かなんて分かっているけど。
「…何で怒ってるんだよ」
「……別に。怒ってなんかないわ」
「その割りには視線が痛いんだけど……なぁモニカ?」
「…なに」
まだ厳しい視線を向けてくるモニカの耳元に口を寄せて一言。
「……ヤキモチ?」
「ー…っ!!」
少し顔を離せば顔を真っ赤にして恥ずかしそうな、でもどこか嬉しそうなモニカの顔が見えた。辛抱堪らなくなった俺は横目でヒューイ達がトランスゲートをくぐったのを確認してから…
恥ずかしさが勝ってきたのか俯き気味だったモニカの肩に触れ、驚いて顔を上げた瞬間を逃さず彼女の唇に自身の唇を重ねる。
重ねてたのは多分、数秒ぐらいのハズ。自分からしておいて何だけど、めちゃくちゃ緊張してたからよく分からなかった。
ゆっくり唇を離すと、何が起きたか分からなかったのか呆然としていたモニカがやっとキスをされたんだと理解したんだろう。途端に唇を手で押さえて更に顔を真っ赤にした。
「き、急に…、なんで……っ」
なんかこんなに慌ててるモニカ見たの初めてだなぁ。目線もあちこちに向けてて定まってないし、まだ顔を真っ赤だし、呂律も上手く回ってないし…ん?初めて…?
「……あ、今の俺のファーストキスだ」
「…え?」
「ほら、新しい体になったからさ。だからファーストキス」
きっとこれから色んな“初めて”が待っているんだろう。
ほら、今も初めてモニカと手を繋ごうとしてる俺がいるんだ。軽く指先を握るとモニカは驚いて体を固くするけど、振りほどこうとはしなかった。
指と指を重ねて強く握り合う。互いが互いの存在を確かめ合う様に。
いつだったかモニカにこう聞いた事があった。
見えるのに、届かないってのはやっぱり辛いんだろうな…って。
見えてるのに、聞こえるのに、其処に居るのに手を伸ばせないのは…
あの時はグレイの事を考えて言っていた。返事を期待していた訳じゃない。モニカからすれば訳の分からない話だっただろうから。
やっぱりモニカからの返事はなくて。でも、そのかわりに袖を強く握られた。
それだけの事でひどく嬉しかったのを今でも覚えている。
まるで俺は此処に居ても良いと言われた気がして、俺の存在を認められた様な気がして。
「…帰ろっか」
「……うん」
今も掌から伝わるモニカの体温で俺は此処に居るんだな、と改めて実感できる。
俺はこれからも生きていける。大切な存在と一緒に。
(君と明日へ)
瞳を閉じないで
一人じゃないの
君と明日へ
・End・
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コレにて【君の〜…】シリーズ終了になります\(^o^)/
高那の脳内設定をサイトにアップ出来て満足です!←
後、やっぱりEDのシーンを小説に書けて達成感はありますねー
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