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「……スレイン、最近無理してない?」



薪を拾いに行った仲間達を待ちながら野宿の準備をしていると、突然モニカがそんな事を問いかけてきた。



「無理?いや、してないよ」



簡易テントを張る手を止めないまま、焚き火をする場所を整えるモニカに背を向けたままそう答えた。

嘘を吐いてるのを気づかれたくないから。



「なぁラミィ、俺無理してる様に見えるか?」



モニカの肩で羽休めをしていたラミィに聞くと、



『いいえ〜そんな事ないですよぉ。と言うかぁラミィちゃんがそんな事させませんから〜』



そんな頼りになる返事が返ってきた。多分えっへんと言わんばかりに胸をはっている事だろう。



「流石ラミィだな」
「スレイン」



笑いながら俺がそう呟くと、さっきまで黙っていたモニカが口を開いた。



「こっちを向いて」



思わず手が止まった。

気づかれない様に小さく息を飲んで、モニカの方に体を向ける。



「どうしたんだ?」



あえておどけた感じで首を傾げると、モニカの瞳が俺の瞳を真っ直ぐに見つめた。



「……本当に無理してない?」



心臓をわしづかみされた気がした。


無理?そりゃあしてるさ、

だってそうだろう?

自分が死人で、
他人に取り憑いていて、
目的を果たしたら消えてしまうなんて、


そんな現実しか無いのに、
無理してない訳ないだろう?

でもそんな事言える訳がない。

君は知らないから、
この事を知っているのは俺とラミィと闇の精霊使い長だけだ。



「……旅が終わりに近づいてるから、もしかしたら少し疲れてるのかも…な」



そう、後少しで

旅が終わる。
俺の命が終わる。


だからそれまでで良い。

知られたくない。


特に君にだけは、

知られたくないのに、



「本当にそれだけの理由?」



どうしてそんなに踏み込んで来るんだ。



「…ははっ、何だよ何でそんなに疑うんだよ?」



これ以上踏み込まないでくれ。



「……だってスレイン、最近ちゃんと笑ってないもの」



笑ってない?
そんな筈ない、今だってほら



「何言ってるんだよ?ほら、笑ってるだろ?」



………何でだよ、
笑ってるだろ?なのに何で…



「……………。」



そんな悲しそうな顔をしてるんだよ、モニカ。



「…ら、ラミィっ俺笑ってるよな?」
『……あ…、』



どうしたんだよ、ラミィ
どうしてお前までそんな顔するんだよ…



「二人共どうしたんだよ…ほら、あはははっ…俺笑ってるだろ、な?」



声を出して笑ってるのに、
何でそんな…



「……ははは…っ」



泣きそうな顔してんだよ…?



「スレイン…もう、いいから……っ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ…今もっと良い笑顔を見せてやるからさ…」



ほら、笑えよ俺…

笑わなきゃ二人が泣いちゃうじゃないか。


笑えよ、
わらえ…っ



(わらえ、わらうんだ)



いつの間にか傍に居たモニカが俺の頬を指でなぞった。

あれ?
……何でモニカの指、濡れてるんだ?



「………もう、いいから…」



だから泣かないで、

泣きそうな声でモニカはそう呟いた。


・END・
―――――――――――――――――――――――――――
笑顔を失った少年の話。

タイトルは某診断メーカー様より。