終盤ちょっと大人…な感じ?になってます
(表記するならR-12?)

それでも構わない方のみ続きをどうぞ( ・∀・)つ


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ぱらりとページを捲り文字の羅列を目でひたすらに追う。
文字の羅列は言葉になり、言葉は意味となってモニカの脳に入り込んでいく。

父に借りたこの古文書は昔の言葉のままだから解読する事から始めなければいけない、嫌いではないが体力を使う作業だ。


古文書から少しだけ視線を上げ溜め息を吐く。そのまま小さく身動ぎしてモニカは違和感を思い出し、視線を下に下ろす。

視線の先に居るのはベッドに座るモニカの腰に腕を回して、彼女の膝を枕にして寝息をたてる彼。

意識してしまえば膝は重たいし腰も違和感があるが、さっきまで全く気にならなかった。


それだけ古文書に集中していたんだろう。
そしてモニカ自身、こうされる事に慣れてしまった事も要因の一つだと分かっている。


古文書を置き、彼の髪に触れる。癖のない柔らかい感触を確かめる様にモニカは何度も彼の髪を撫でた。



「――………ん…、」



何度も撫でられ流石に気づいたのか彼が小さく声を漏らし、うっすらと目を開いた。
手の動きを止め、モニカは彼の顔を覗き込む。



「ごめんなさい、起こしちゃったわねスレイン」



寝起きで頭が働かないのか彼…スレインは返事もせず、寝ぼけ眼のまま体を少し起こし顔を覗き込んだまま屈んでいたモニカの唇に触れるだけのキスをして、



「………モニカが本よむの、ヤメてくれたからいい」



そう言って子供の様に口元を綻ばせた。



「……相変わらず甘えん坊ね」



少し顔を赤くしてモニカがそう返すと、スレインは起き上がって体勢を立て直し改めてモニカを抱きしめた。



「そうだよ、知らなかった?」
「私がそれを知らない訳ないでしょう」
「それもそうだな」



モニカが体を預けてくれたのが嬉しかったのかスレインは、少しでも隙間を埋めようとまた抱きしめる。
スレインの体にすっぽりと収まってしまったモニカも彼の意図を察して体を擦り寄せた。



「めずらしいね、モニカからこうしてくれるの」
「……今日は、私も甘えん坊…なのかもしれないわ」
「いつでも甘えてくれればいいのに」



髪にキスを落とされながらモニカは不意に思った。誰かに心を許してこんなに甘えるだなんて自分も変わったものだ、と。



モニカはエクソシストの父とその父の式神である母との間に産まれた人間と式神のハーフである。
体の構造や組織体は人間のものだったが、その体の成長は式神の成長に似ていた。

その為モニカの体は幼いままだった。二十歳手前の今でも事情を知らない者からすればモニカは十歳手前の少女にしか見えないだろう。


それで父と母を恨んだ事がない、と言えば嘘になる。小さかった頃は周りの子供達と違う自分が嫌だった、みんなと一緒に年をとっても成長しない体が。

だがいつの間にかそれを受け入れる様になっていた。否、受け入れるのではなく諦めていた。
成長しない体は“そういうもの”だから仕方がないなんだと。



事情を知らない者達から幼い頃のままの姿に好奇の視線を向けられ、


事情を知る者達からは人間と式神の血が混じったまがい者と影で囁かれ、



気がつけば親族の者と式神以外には心を閉ざしていた。


自分で自分の心を隠したのだ、
自分が自分を受け入れきれないから。



でも、彼は受け入れてくれた。


彼は…スレインはそんなモニカに真っ正面から向き合って、理解して、受け入れてくれた。

だから彼に惹かれたのだろう。彼の真っ直ぐな心に、全力で自分を愛してくれる想いに。


想いが通じ合って、互いの存在の大切さを知って、体を重ね合って…。

自分を受け入れてくれる大切な人が居る幸せを感じると同時に、ある思いをモニカは感じていた。


それは何時か彼を置いて逝ってしまう悲しさ。

それは何時か彼を一人してしまう怖さ。


不運な事故や出来事が起きない限り、きっと私の方が先に逝ってしまう。

式神と人間の寿命の差という以前に、モニカは自身が人間の中でも短命だと知っていた。


人間と式神の間に産まれ、両方の才能を得た代償。

有りすぎる才能と、人間の体に波長の合わない成長、それらがモニカの命の灯火を確実に奪っている。


……それを知っているのは、
彼女自身と両親のみ。


スレインには言えない、
だって彼は…



「……モニカ、モニカ…っ!」



名前を呼ばれモニカが我に帰ると、スレインが眉を寄せ心配そうに顔を覗き込んでいた。



「スレイン…どうかした?」
「どうしたはこっちのセリフだ、何度も名前呼んだのに…」



悲しそうに瞳を伏せ、スレインはモニカの髪に頬を擦り寄せた。



「……少し考え事してただけだから心配いらないわ」
「ホントに?」
「えぇ、大丈夫よ」



腰に回された腕に手を添えてモニカが微笑むと、スレインは安心したのか小さく溜め息を吐いた。
そしてモニカを抱きしめる腕に力を込める。

幼児が置いていかれるのを怖れ母にしがみつく様に。



スレインは孤児だった。
年端もいかぬ内に両親に捨てられ双子の弟と同じ境遇の子供達と肩を寄せあい、手を取り合って世間に隠れ暮らしてきた。

だからこそ彼は仲間を見捨てないし、仲間を裏切らなかった。
見捨てられる悲しさを知っているから。裏切られる辛さを知っているから。


故に彼は置いていかれる事を恐れていた。

本能がそうさせるのか、本当にモニカが辛い時や“未来”の事を考えている時は敏感に反応する。

今だってそうだ、スレインはいつも以上にモニカにすがり付いていた。手離せば何処かにいってしまうと信じている様に。



そんな彼に言えるだろうか?
自分が短命だと。遠くない未来、きっと貴方を置いて逝くだろうと。


……いっそ話してしまおうか。

彼に全て、
そしてこう言えばいい。



私が死ぬ時に一緒に死んでくれない?そうすればずっと一緒に居られるから、と。



あぁ、なんて愚かな事を考えてしまったんだろう。

言える訳がない。

彼には生きていてほしい。1度生死の狭間をさ迷い、そして歩みだした新しい生命を消さないでほしい。



―……例え、その世界に私が居なくても。



「――………モニカ」



名前を呼ばれた事に気づいたのと、視界が反転したのはほぼ一緒だった。
背中にはさっきまで座っていたハズのベッド。視界に被さるスレインと、その隙間に見える天井。
モニカを見下ろすスレインの瞳には怒りの火がくすぶっていた。



「また、考え事してただろ」
「…えぇ」
「……オレに言えない事?」



相変わらずスレインは“その事”について敏感だった。

モニカは思わず言葉に詰まる。
しかし真っ直ぐ自分の瞳を射抜くスレインの瞳から逃げる事も出来ず、



「……えぇ、そうよ」



素直に打ち明けるとスレインの行動は早かった。



「だったら―…」



ベッドに投げ出されたままだったモニカの両腕を、スレインは片手でまとめてモニカの頭上に上げて押さえ付ける。
そしてモニカの顔に自分の顔を近づけて止める。息と息が交わる程近い所で。



「ナニも考えられないようにしてやるよ、オレの事以外な」



そう呟やかれモニカは噛みつく様に口づけられた。
何度も角度を変えてキスをされ、遠ざかっていく理性が声にならない言葉を溢す。



……恐れているのは貴方だけではないのよ。



(置いていく者、いかれる者)



だって置いていかれる貴方は知らないでしょう?

置いていく者の辛さも悲しみも怖さも、何一つ。


・END・
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置いていかれる事を恐れるスレインと置いていく事を悲しむモニカ。


捕捉しますと、式神の成長は人間に比べると遅いです。

人間の10年分の成長=式神の1年分の成長
↑ぐらいに考えてます。

モニカは5〜6歳まで人間並の成長でしたがそこから式神に近い長に変わってしまった感じ。
(3〜4年分で1年分ぐらい)


中身は19歳でも見た目がアレだから、端から見たらスレインはただのロリコンに(笑)
しかも手まで出してるから端からしたら警察ものだよ\(^o^)/←