今、いくよ | ナノ
07

 
 
 
「ほわああああ!!」


「ちょっとなまえ、あんまり奇声を上げないでくれる?」



とある昼下がり、私は目の前にいるプリティエンジェルに心を鷲掴みなうである。


「可愛すぎてなんかもう…っ」


うずうずが止まらない。


なぜ私がこんなに興奮しているかと言うと、今から3日前に遡る。









******************








「ギャリーさんギャリーさん、一生のお願いがあるんですけど聞くだけ聞いてくれません?」


その時の私は、多分かなり真剣な顔をしていただろう。


「な、なに?て言うか何でいきなり敬語になってんの!!?」


「そこはまぁスルーで」


ギャリーは少し、…いやかなり驚いた様子だ。

敬語になったからってそんな驚かなくても良いじゃんかよ。失礼なオネェだわまったく。


「…で、一生のお願いって?」


「うん、イヴに会わせて!」


 
 
「イヴに?」


「イヴに!!」


そう、私の一生のお願いはイヴに会うこと。(忘れてたけど)

「ハンカチもう返したの?」


「とっくに返したのわよ」


「えぇー…」


くそ、折角ハンカチを返すのを口実……キッカケに、あわよくば私もイヴに会おうと思ったのに。


「なーんだ…残念」


「別に、会えないなんて言ってないでしょ?」


「えっ、会えるの?」


「イヴに会いたいって子がいるって連絡するけど」


「あ、ありがとうギャリー!!」


まさかこんなに早く夢が叶うとは。しかもイヴに電話したら返事はオッケーだった。

私はなんて幸せ者なんだ…!!今なら苦手な玉ねぎ食べても喜べる自信がある!!

晩ごはんで玉砕したけど。







その日から私はウキウキワクワクしながら待っていた今日と言う日が、ついに、やって来た。


そして今である。




「イヴ、この変な子がアンタに会いたいって言ってた奴よ」


変な子だと!?失礼極まりないなギャリーこのやろう。


「イヴ…です。よろしくお願いします」


 
 
ペコッと頭を下げる姿も可愛いなんて、なんかもうプリティハンターだな!!

…ん?

イヴがプリティハンターだと、可愛い子を狩るのはイヴになるような。

……まぁいいや!!


「はじめまして、なまえって言います。よろしくねプリティエンジェル」


「エンジェル…?」


「気にしなくていいのよイヴ。なまえはこういう子なの」


「そうなの?」


首をかしげてる…!!イヴが首をかしげてる!!

外国の子供は可愛いなぁとか前々から思ってたけど、イヴは別格かもしれない。

クリクリな赤い目とか、サラサラなロングヘアーとか、愛らしい顔とか。こりゃロリコンが黙ってないな。


「イヴって呼んでいいかな?」


もう呼んでるけど。


「うん。私もなまえって呼んでいい?」


「もちろん!」


私がそう言うと微笑むイヴ。その姿がなんだか、とても大人びて見えた。


「近くに喫茶店あるのよ。 そこで色々話しましょう」


「賛成賛成っ!」






* * * * *






てことで、喫茶店に入った私たち。


金髪美女が「いらっしゃいませ」と言いながら営業スマイルをばらまいていらっしゃる。


店員に促され席に座った私たちは、取り敢えず飲み物を頼もうとメニューを開いた。

ちなみに席順は、私の隣にイヴがいて、イヴの前にギャリー座っている。


「ギャリー決まった?」


「アタシはアイスコーヒー」


うん、予想通りだね。


「イヴは?」


「んー…オレンジジュース」


大人びていても、オレンジジュースを頼む所はやはり子供なんだな。そんな所も可愛いよ。ギャップ萌えだよ。


「じゃあ私はミルクティー」


それぞれ決まった所で店員を呼び、注文をした。


「イヴは学校楽しい?」


「うん、楽しいよ」


「そっかぁ。お友達と普段何して遊ぶの?」


「公園行ったり、お家でおしゃべりしたりしてる」


その年でガールズトークか。うーん、入りたい。


「なまえは普段何してるの?」


「えっ私?」


そう来るとは。

私の日常と言えば、ギャリーの帰りを待ちながらマイベッドのソファーでごろごろしたり、冷蔵庫を意味なく開けてみたり、テレビを見たり。

私の青春どうなってんだ。


「えっとね、」


「お待たせ致しました」


言おうとした瞬間に、これまた美人な店員さんに遮られた。店員さんは、ギャリーを見てほんのり顔を赤くしている。


…イケメンこのやろー。


「ごゆっくりどうぞ」


「ありがとう」


ギャリーがそう言うと、更に顔を赤くしてパタパタと去って行った店員さん。


「天然タラシ」


「は?」


「いやこっちの話。私は普段ギャリーの家に居るよ」


私はイヴの方に向き直し、先ほどの話を続けた。


「ギャリーの家に?」


「うん、ホームステイみたいな感じかな」

々と言った風に、イヴが私の話を聞く。


「じゃあなまえは外国から来たの?」


「日本からね」


「日本…!」


目を輝かせているイヴ。


「日本のお友達は、どんな人なの?」


「私の友達?うーん、みんな変わった子ばっかだなぁ」


ミルクティーを見つめながらそう答えた。

皆、元気にしてるかな。


「寂しくないの?」


「え?」


「家族もお友達も皆日本にいるんでしょ?」


純粋な目をして聞いてくるイヴに、私は言葉を詰まらせた。

…ギャリーの前だから


「寂しくないよ」


寂しいなんて言えない。


あぁもうまただ。こう言う話になると、ちゃんと笑えてる気がしない。

辛気臭いわ、ほんと。


「酷い顔してるわよ」


私に真顔でギャリーがそう言ってくる。


「ちょっと、ギャリーそれ仮にも乙女に向かって言うなんて」


「そういう意味じゃないわよ」


じゃあどういう意味 か、なんて聞かなくても分かってる。


「イ、イヴのお友達はどんな子なの?」


私は苦し紛れに話を変えた。怪訝そうな顔をしているギャリーは放っておこう。


「私のお友達は優しい子がいっぱいいるよ。…ギャリーも、なまえも」


この時ばかりは微笑むイヴが本物の天使に見えた。


「ギャリー…イヴのパパやママが羨ましい」


「アタシもそう思ったわ」


イヴのパパやママも自慢だろうな、そうそう居ないよこんな良い子。

私とギャリーは半ば感動しながらイヴを見つめるのであった。



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