今、いくよ | ナノ
05

 
“私がギャリーに、会いたいって思った…から?”


彼女はアタシに、そう言った。
なんとも言えない複雑な気持ちになった。だって、アタシに会いたいって…それだけで。それだけの理由でこの世界に来れるものなのだろうか。

……いや、本当はただ純粋に驚いただけ。

なまえが言う世界の住人だから会いたいって思ったのか、それとも。


なまえが、アタシを…、



「ない、ないわね。それは絶対にないわ」


自室のベッドの上で独り言を呟き、悶々と考え込む。なんかそんな事を考えてるのが恥ずかしくなってきた。

は、恥ずかし…。うわーうわーほんとにアタシ何考えてんの。


気を紛らわすために壁に向かって頭をガンガン打ち付けるが、恥ずかしさは取れないまま。

落ち着け、落ち着けアタシ。そうだ、直接なまえに聞いてみればいいんだ。

そうと決まればさっそく行動しよう、そう思ってなまえが居るであろうリビングに向かった。

リビングのドアを開けると、ソファーで三角座りをしながらボーっとしているなまえが居た。


「なまえ」


「……」


呼んでみたけど、返事が無い。深く自分の世界に入っているようだ。


「なまえ!」


「っへ!?…あ、ギャリー」


脅かさないでよ、とため息をついたなまえ。


「いつから居たの?」


「今さっきからよ」


「リビングに入って来るのに全然気が付かなかったよ」


そう言って笑うなまえの隣に座った。


「なまえ」


「なにー?」


「質問、していい?」


「どんと来い!」


何?と聞いてくるなまえに、アタシは言葉を詰まらせた。


「えっと…」


「なになに?」


「あの…あのね?」


「うんうん」


「その…」


「はやくはやく」


なかなか 切り出せない。喋る屍になれ、アタシ!


「そ、の…なまえはアタシの事どう思ってるの?」


「はいはい…は!?」


うん?…なんか告白みたいな、す、好きな人に自分の事どう思ってるの?って聞いてるみたいじゃない!!!なんでかしらものすごく認めたくない!!


「なまえ、い、今のはちょっとアタシの考えている意味と違うというか…」


「ギャリー…大胆だね!!」


しまった目が本気だ。

内心頭を抱える思いのアタシになまえはでも、と続けた。


「そんなギャリーも好き」


悪戯っぽく笑うなまえを見て顔が熱くなっていくのがわかった。


「っ…、晩御飯、食べましょうか」


無理矢理話を反らしなまえに背を向け、キッチンの方を向いて歩き出した。

顔赤くするとか…男なのになんだか乙女みたいな反応してるわねアタシ。
そう思っていると

「待ってギャリー。まだちゃんと答えてない」


 
 
アタシをひき止めるなまえ。思わず足が止まってしまう。


「ギャリーの質問の答え、言うね。私がギャリーが大好きっていうのは紛れもない事実。本当にそう思ってるの。でもね、それが恋愛感情なのかどうかはわからないな…。今までギャリーを画面上でしか見てなかったから」


苦笑しながら言うなまえ。


それもそうだ。画面上のキャラクターに恋するのと、現実で恋するのとは違う。

だからなまえにとってアタシは、画面上にいた好きになったキャラクターに過ぎない。


「正直に答えてくれてありがとう」


少し残念、とか。
まだ会って1日も経っていないのにそう思うのは、おかしいのだろうか。

そりゃあ好きになってもらうのは嬉しい事だし、勘違いして違ったってなると残念に思うの当たり前…よね?


「だから、」


再びキッチンへと進めていた足がなまえの言葉によってまた止まった。終わったと思っていた話がまだ終わっていなかった ようで。


「私の目の前にいるギャリーを見て、どういう“好き”なのか探してみる」


彼女の言葉に少し驚いた。

探してみる、か。


「…そう」


「うん」


なんか、なんて言うか。

心の中が非常にスッキリした気分になった。


「でも、どうしていきなりそんな事聞いたの?」


「え!?」


しまった。そんな質問を返されるなんて考えもしなかった。

だから当然、その質問の答えを素直に答えるなんて事ができるはずもなく。


「い、や、そこはスルーしてくれると有難いわ」


「じゃああえてスルーしない方向で」


「…わかったわ。晩御飯いらないのね」


「スルーします」


なまえが扱いやすい子で良かったと心底思った。




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