08
「あら、もうそろそろ時間じゃない?」
「…本当だ」
「え、もうおしまい?」
何やらイヴに都合があるらしく一緒に話せるのはここまでのようで、その事に私は肩をガクリと落とした。
イヴのママが最初に待ち合わせをした公園に迎えに来ているらしく、ギャリーと私はイヴを見送る為に付いていく。
お店を出るときに、またもや美女がギャリーを見て頬を赤く染めていた。
当の本人はその事に全く気付いてないみたいだけど。
「ほんっと、天然タラシ」
「え?」
「あの女の人がイヴのママ?」
「うん」
公園に着くと、赤い車を背にキョロキョロとするスレンダーな女の人の姿があった。
「ママ!」
「あら、やっと見つけた」
ママの元へと走って行くイヴを笑顔で抱き締めるイヴママ。
親子愛だ…!!
「ギャリーさん、お久しぶりです。イヴがお世話になりました」
「いえいえ此方こ そ」
お互いにペコリと頭を下げている二人。私はその光景をボケッと見ていた。
すると、頭が上がったイヴママと目が合った。
「あら」
口元に手を添えながら私を見るイヴママに、若干の緊張が私の中で走る。
「ギャリーさん、もしかしてこの子ガールフレンド?」
「「はっ!?」」
興味深々でキラキラ光る目がイヴとそっくりだ。
「そうなのね!やっぱりそうだと思ったのよ〜」
うんうんと納得している様子だが、私達は開いた口が塞がらない状態だった。
「何て言うか、雰囲気?そう、オーラが物語ってたのよ!!」
「いや、あの…」
「良いわねぇ若いって…私とパパも付き合いたての頃は初々しかったわ〜。パパったらなかなか手を繋いでくれなくてね、寂しくて私から手を継いだら凄く照れ臭そうにして笑うのよ。その顔を見てますます好きになったわ…あ、それとファーストキスの時珍しくサプライズなんか用意しちゃってて、わざわざ夜に呼び出してパパの車に乗って素敵な夜景が見える場所まで行って夜景をバックにファーストキスをしたの。あれは忘れられない思い出だわ………って、あらやだ私ったら何でこんな事話してるのかしら!ごめんなさいね」
「い、いえ…仲が良いんですね」
反論すら出来なかったくらいに間がなかったおのろけトーク。
ひきつり笑いをしながらギャリーは言葉を返した。
「なまえ」
「ん?どうしたの、イヴ」
イヴはくいくいと私の袖を引っ張る。
イヴと目線を合わせるために少しかがむと、私の耳元でイヴが話し出した。
「なまえはギャリーのこと好きなの?」
「!!」
思いがけない質問に、私は勢い良くイヴの方を見た。
ギャリーの方をちらりと見るとイヴママのおのろけトークがまた始まったらしく、苦笑いで話を聞いていた。
「イヴ、それは、どういう意味の“好き”なの?」
「意味…?」
ハテナマークを浮かべ首をかしげるイヴ。
「友達としてなのか、れ、恋愛の意味なのか」
こんな小さな子供相手に私は何を言っているんだろう。
そう思うと少し恥ずかしくなった。
「勿論、恋愛の意味 で」
イヴは何故かウキウキしている様子。…いや、やはりそこは女の子、恋愛の話は興味を煽るのだろう。
どう、答えるべきか。
さっき喫茶店に言った時、店員さんがギャリーを見て顔を赤くしている場面。確かに少し、複雑な気持ちにはなった。
…でも、嫉妬したのかと聞かれたら、わからない。
「………」
自分の事なのに……自分の事だから、尚更わからない。
「さ、イヴ帰りましょうか」
答えを出せずにいると、色々話してスッキリしたのかイヴママが晴れ晴れとした表情でイヴを呼んだ。
「なまえ、またお話しの続き聞かせてね」
「…、うん」
車に乗り、バイバイと手を振るイヴに私も振りり返す。
車を発進させたイヴママは私達に浅くお辞儀をした後、家へと帰って行った。
「優しそうなママだね」
「……そうね」
声からも分かるくらいにげんなりした様子のギャリー。
「嵐が去った…って感じ」
「あははっ確かに」
「…アタシ達も家に帰りましょうか」
「うん……」
なまえはギャリーの事好きなの?
イヴの言葉が頭によぎった。
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