the irony of fate | ナノ


僕は幼少の時から、夢の中で他の世界に行くことが出来た。



しっかりと自我を持っている事と、妙に現実味を帯びているこの夢の中を何度か行き来している間に、ここは夢であり実際に起こり得る世界なのだと理解した。

起こり得る世界で生活している僕は、なんら変わりは無かった。僅かな違いはあるが家も裕福で、変わらずバスケをし、小、中、高と全て同じで、夢から覚めた現実と全く変わっていないのだ。

僕には起こり得る世界が存在していなかった。その事実に酷い虚無感が僕の中を支配していた。

そんな時に、名字名前という一人の女子生徒を見つけた。彼女は、変わり行く世界の中で唯一変わらない僕に必ず関わってくる。

事故に合った世界、いじめられている世界、楽しそうにしている世界、よく泣いてる世界、よく笑っている世界、よく怒っている世界。そしてどんな世界でも、僕もいつも彼女の人生に関わっていた。

僕は彼女に惹かれていた。柄にもなく、直感的に、運命の人なのだと思った。


だが現実世界で、僕はまだ彼女に会っていない。確かに存在はしているが、学校に来ていないのだ。噂によると、家に引き込もっているらしい。理由は知らない。このままだと会えず終いになってしまうかもしれない。現実世界の彼女を知らないまま、また夢の中の彼女を知り惹かれていくのはおかしい事だと思った。

しかし、待っているだけでは彼女には会える見込みがない。だから、僕は直接彼女に会いに行こうと決心していた。彼女と会ってどうなるのかは検討もつかないのだが、会わないよりはずっとマシなのは分かる。

だから明日、僕は君に会いに行く。

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