the irony of fate | ナノ


違う世界。

真っ暗にした部屋でベッドに横たわりながら、先程の赤司君の発言について考える。

まさか彼が、わざわざ理由のない嘘を言うような事をするだろうか?いいや、そんなことするばずがない。根拠はないものの、そういう結論に至った。

赤司君が本当に違う世界に行っていたとしたら、それはどういう感覚なのだろう。……楽しい、とは違うんだろうな。自分だけなにも変わらない世界を見ていてもきっと面白くない。行ったことのない私が憶測でそう思ってるだけだけど。

私がいつも赤司君に関わっているって、一体どういうことだろう?違う世界の私は、どんな性格をしていたのだろう。


「……パラレルワールド……」


何かの漫画で読んだことがある。確か、もしもの分だけ世界がある……だったような。ということは、赤司君は違う世界で色んな私に会っていた事になる。

……なんだか、恥ずかしくなってきた。

色んな私は、当たり前だけどそれぞれ違う境遇や性格で、そのなかでは当然学校に行っている私もいる。明るい性格の私や、暗い性格の私。たくさんいる。つまりそんな私を赤司君は知っているわけで……。

私の知らない私を赤司君は知っている。自分の事だけど、それを知らない私。ああもう意味がわからなくなってきた。

今の私は、明るかった性格から暗い性格に変わってしまった。……いや、どうだろう。赤司君のおかげで、私はだんだんと昔の自分を取り戻してきている。

でも、それが少しだけ怖い。

昔の自分を取り戻しても、学校に行けるかと聞かれたら、まだ怖くて……また、同じようなことになるかもしれない。そんな事ばかり考えてしまう。

気持ちが取り戻せないのなら意味がない。家の中や、赤司君の前でだけ自分を取り戻しても、それは本当に自分を取り戻したとは言えないんじゃないか。

そう考えながら体の向きを変えた。すると、それと同時に暗かった部屋に一つの光が灯る。それの正体は、私のスマートフォンだった。


「……よ……いしょっ」


ベッドから離れたテーブルに手を伸ばして、スマートフォンを取る。


「……意味わかんない」


メール画面に表示されるのはかつて仲の良かった……私がいじめられる原因になった彼からだった。

明日、会いに行くから

短い、顔文字も絵文字もない文章。それだけなのに、会いに来る事実が重く乗しかかる。一体何のために、私に会いに来るのか。何を言うつもりなのか。胸の奥がモヤモヤして、不安になる。


「……っ、あかしくん……」


私はどうしたらいいですか?


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