受難の末
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「ご苦労さん」


無機質な広くて長い廊下を一組の男女が歩いていた。

前を行く銀髪の男は市丸ギン。
藍染たちと共に尸魂界に反旗を翻した元三番隊の隊長。

其れに続いているのは井上織姫。


「すまんなぁ。此処の連中、血の気が多くてな」

「ぃぇ、……。(あたしが此処の人たちを治すことで戦いが酷くなるかもしれない。………でも、少しでも黒崎くんたちが準備できるように、こっちに気を引かなくちゃっ…!)」

「(……ホンマ、藍染隊長もオモロイ子に目ェつけたわ)」


廊下の少し先が広間の様に開けている。此処は4本の通路が交わる場所で、特に広く作られている。

此処を曲がって暫くすれば、織姫が与えられている部屋に着く。



「ん?あの子……」



市丸の視線の先には、フラフラと歩く女の子の姿があった。

見覚えのある顔に、織姫は浮かんだ名前を呟いた。

「叶華さん……?」
「知っとるん?……って、君が"繋げた"んやったな」

叶華の視線はどこか遠くをぼんやりと眺るように、斜め上に向いていた。

「どないして部屋から出たんやら、"寵姫"ちゃん」

「"寵姫"…?」
「あの子の事、藍染隊長に聞いてない?

……ならボクが教えたるわ」

市丸が楽しげに振り向いた。






「叶華ちゃんはな、藍染隊長の恋人なんよ。まぁ、生きとった頃の話やけど。

藍染隊長、今でも叶華ちゃんが忘れられへんくて、あないに頑張っとんよ。酷い人やろ、切って繋いで……前まで生首やってな、後生大事に飾っとった。

………でも藍染隊長も叶華ちゃん殺したこと後悔しとんや」






意外な過去に、織姫は何と言えばいいのか分からなかった。

其の時、叶華の歩みを止める者が居た。


「藍染隊長や。
お姫様が部屋から消えたのに気付いて探しに来たんみたいやね」

藍染は後ろから叶華を抱きすくめていた。

「見てみ、アレ。
叶華ちゃんにぞっこんや」


抱いている人が、他人の体と繋ぎ合わせて生き返らせた恋人でなければ、とても良い光景だっただろう。

「どうして、…そんな人を殺したんでしょう…?」

「さァ?ボクにも藍染隊長はよぅわからんし。
あれやない?可愛い彼女を取られとぅなかった、とか。ようは独占欲や、行き過ぎとるけど」

叶華ちゃん結構可愛いしキレーやし、と言う市丸の言葉に、織姫は少し違う印象を覚えていた。

「叶華ちゃんがどう思っとったかは分からんし、人間と死神じゃ同じ時は生きれんしなぁ〜」

「(人間と死神………もしかしたら、藍染さんは、)」

織姫は視線の先の2人を見た。






「叶華、勝手に出歩いてはいけないよ。
私の部屋に居てくれ」






叶華は藍染の言葉に反応を示すことなく、ただただ宙を眺めている。

きっと叶華の耳に藍染の言葉は届いていない。

藍染は叶華を抱き上げ、瞬歩で消えてしまった。
恐らく行き先は私室。

「藍染隊長、ボクらに気付いた上で放置か〜。
ま、ええけど。さ、戻ろか」

もう少しで見える、与えられている私室に向かって歩き出す。




「(一緒に居たかったのかな……好きな人と同じ時を)」


((甘味+苦味=愛))
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「ヤり放題やないですか」
「………何のことかな」
「叶華ちゃんですよ。無防備やし」
「抱く気はないさ。首から下は愛せない」
「勝手に繋いでワガママな人や……」

藍染さんの膝の上では叶華が寝ているのでした。


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