独占
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織姫は隣の監視部屋を見て溜め息をついた。


そこの使用者はもういない。
数日前、虚圏の王が手に掛けたのを見てしまった。










神蒼空叶華

元は死神だと聞かされた女性。
何でも拷問のスペシャリストだとか。









世話係として藍染に引き会わされた。

何かあれば声を掛けるといいと言われたが、よく居眠りしていてほとんど気付いてもらえなかった。



時々藍染が隣の部屋を訪れて何かを話していた。

約束をしていないのか眠ったままの叶華。


寝ている叶華の頬を、部屋に置いてあるナイフで切り裂いて起こすという荒業には驚いたものだ。

それが普通なのか起きた叶華は平然と話していた。





何より驚いたのは斬魄刀を首に添えていたこと。





殺気に気付いたのか、起きていたのかは分からないが、その時だけはいつもの荒業なしに瞼が持ち上がった。


いつもより短い会話。

藍染が初めて叶華の頭を撫でて部屋を出た。



そして……ほんの数日前、叶華は殺された。






























私が叶華さんについて知っていることはほとんどない。世話係とは言っても、全く話さなかったから。

数少ない知っていること、それは……。




藍染さんに殺されたこと。

抵抗せず、最期には笑っていた。




そして……。










「どう…して………その人は仲間なんじゃ…」

手の震えが止まらないまま呟けば、藍染の視線が自分に向いて肩を震わせた。



「仲間、か。…正確には違う。
叶華は、そうだな、…………友、…というやつだよ。
これ以上大切な友人に退屈を強いるつもりはない」




織姫は理解が追い付かなかった。


『大切な友人』を平然と殺す藍染。
仲間でもない悪人に笑顔で殺された叶華。

そんな2人の関係。

歪で異常で……織姫は隣室の死体を見られなかった。






「叶華の笑みを見るのは2度目だが、やはり個人に向けられている方が綺麗でいい」





((誰とも共有したくないもの))
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「寝首をかくなんて隠密起動でも滅多にしないけど?」
「何となく拷問してみたくなってね」
「首落としたら拷問にならないよ」
「それもそうだね。私には向いていないようだ」
「殺したいなら起きてる時にお願いするよ」
「気が向いて叶華が起きていたらそうするよ」


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