![]() == == == == == 今夜…いや、今朝だろうか。 まぁ時間の分からないこの場所では表現のしようがないが、今も反響に反響を重ねて聞こえてくる微かな絶叫。 あぁどこかの拷問部屋が使われてるな…。 そのくらいにしか心動かされない。 退屈なこの場所では眠るくらいしかすることがない。 だがあの悲鳴を子守唄にするには少し音量が足りない。 叶華は今、手枷足枷を着けられて牢に放り込まれていた。 地下監獄ではあるが、重犯罪者用ではない。 今この状況は四十六室が自らの失敗を隠蔽し、それでも叶華の報復を恐れてのことであった。 四十六室が極刑を下した者が実は冤罪であった。 ただそれだけのこと。 叶華にとってはどうでもいいことだが、世間体を僅かばかりも気にする四十六室はそうはいかないらしい。 拷問官が吐かせた内容に誤りがあったこと、その上、非道にして残酷な拷問による自白であると。 叶華は吐かせた内容をそのまま上に伝えたつもりだ。 だが都合よく改変され、でっちあげられたようだった。 …と、かれこれ十数年近く牢屋生活を強いられている。 四十六室の言い掛かりに突っかかるほど執着心もなく、慣れ親しんだ地下監獄で大人しく罪人生活を送っている。 ここを『下』として、『上』のことで気になることが1つある。 それは叶華の数少ない……と言うより、唯一と言っても過言でない"友人"のことだ。 "彼"とは叶華が冤罪で牢獄に入れられる数年前に出会った。 それは『貴重な出来事』として鮮明に覚えていた。 ((物知りで物好きで可哀想なともだち)) == == == == == == == == == == 「…、……おい、」 「…ん?あぁ…看守さん」 「……生きて、いるようだな。余計な事はするな…」 「嫌だなぁ、誰も脱獄なんて考えてませんよ」 ← | → |