最後だから
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「叶華は前向きだね…」

目を伏せて言う。

自分は思っていたより不器用なのかもしれないと思う。





「私は嘘つかれても怒ったりしないよ。
それが惣右介が自分を守るために必要な嘘なら」





愛しそうに触れる手は、まるで壊れ物に触れているようだ。

とても繊細なものと戯れるように。

「だから惣右介が今まで私に見せてきたすべてが嘘でもいい」

最初に藍染の悪事を知り、見逃した時に思ったことだ。

そしてこの100余年、そう思い続けてきた。


「叶華なら、見抜いているんじゃないかい…?」
「さぁ?私はそこまで有能じゃないもの」


例え有能であってもどうでもいいことだ。

そう、"どうでもいい"のだ。

藍染がくれる言葉が、行いが、嘘でも本当でも。

叶華にとって心を向けるべきものではない。



「――…でもそうね、ちょっとだけ失望してる」




――自分に…。




藍染から離れると、月明かりの届かない暗闇へ歩いた。

「叶華…?」

逆光となり藍染の顔が見えない代わりに、藍染からは叶華の姿が見えない。

「私ね、絶対そうはならないって思ってたのに…」

"絶対"はある。
叶華はそう信じていた。

意思の強さこそが絶対を絶対たらしめる、と。


「でも"絶対"なんてないんだって分かった…」

大切ではある。

ただ、それ以上を望むことはないはずだった。

それなのに、心は揺れたのは真実だった。
この100余年で、その姿を目で追ってしまうようになった。







「ごめんね。
藍染隊長のこと……――ちょっとだけ好きになっちゃった」





((偽りであると知っていながら))
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「神蒼空くん、この仕事を任せてもいいかい?」
「――……えぇ、いいですよ」
「それじゃあ頼むよ。もし何かあったら相談してくれ」

「(あー…、思ってたより"良い人"も板についてるなぁ…)」


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