若かりし頃
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「あれ、首席がこんなところで独り寂しく読書?」





叶華との出会いは霊術院の2回生の時。


同級生の騒がしさにうんざりして、1人で読書をしていたら、誰も通らないと思っていた場所で見つかった。

彼女が僕より2つ下の学級の2番手と知ったのは、出会って暫くした頃だ。












「惣右介くんって本当に物知りだね」

辞書みたい、と人を便利道具扱いした時は頬をつねってやった。



「あ、また1人でいる」


叶華は僕より知識も少なく、実力も及ばない。

それでも他の連中と違い、遠ざけなかった。

何故?
僕を真っ直ぐに見詰め、騙されなかったから。




「この歳で無理に笑う子供は変な大人になるんだよ」




ほら、肩の力抜いて。

無理に笑ってるより怒った顔してる方がいいって。

人を見下してる感あるよね。でもそっちの方が好き。


後にも先にも、僕にそんなことを言ったのは叶華だけ。







「手を抜くのと気を抜くのは違うんだから。
頑張りすぎると疲れちゃうよ?」








あれが初めてだ。

叶華に、……他人に甘えることをよしとしたのは。


叶華の膝を借りたあの日の休憩時間は、とても安らかな時間だった




((安眠枕))
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「惣右介くん、休憩時間終わっちゃうよ」
「………、僕は…寝ていたのか…。すぐ起こせばいいのに…」
「びっくりしたけど、可愛かったから」
「……男に言うには不適切な表現だと思うよ」
「私は思ったことを言っただけ」


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