![]() == == == == == 主の腕の中はとても心地よくて。 あぁ、この人が僕だけのものならいいのに。 誰も知らない場所で僕と貴女、2人だけならいいのに。 「主、僕とどこか遠くへ行きませんか?」 そんなことを口走る気はなかった。 でももう口をついて出てしまった。 「主、僕は貴女のことが……」 「宗三、」 もう顔も上げられなかった。 きっと拒絶される。 先に真名を聞き出すべきだった、なんて後悔しても遅い。 あぁ、知っていれば、無理にでも連れていけたのに………。 「私は私。それ以上でも以下でも、もちろんそれ以外でもない。 一緒には行ってあげられないよ」 ほら、やっぱり……。 「遠くまでは一緒に行ってあげられない。 だから、宗三、2人で近くまで散歩にいこう……」 ((本当の貴女の尊い時間)) == == == == == == == == == == 「それで許しておくれ……」 「……分かりました。抱いて歩くのも甘んじて拝命しますよ」 「なに、手間は取らせないよ」 「中庭まで、などと言わないで下さいね」 「……裏山の麓まで、かねぇ…」 ← | → |