![]() == == == == == そして約束通り、主は僕と散歩に出た。 最早歩くことさえ楽ではない体に鞭を打って。 その日、僕はこれまでの刀生で一番幸せな時間を過ごした。 隣には主がいて、回りには誰もいない。 僕だけが、主の時間をもらった。 それから本丸に帰り、2人で少しだけ酒を飲んだ。 勢いで口付けをしてしまうほど、その時の僕はとても気分がよかった。 そして僕は夢は必ず覚める目のだと知った。 短刀たちの悲鳴と泣き声で目を覚ました。 中庭を覗けば池の回りに皆が集まっていた。 そこで、地面に横たわる影に気付いた。 僕は側に駆け寄ろうとして止めた。 小夜や兄様が青い顔であの人の下へ急いでいる。 それでも僕はその場に…いや、部屋に引き返した。 真っ暗な部屋の片隅。 僕は主が死んだ絶望の際で、最期を自分にくれた喜びに涙を流した。 ((それは永遠の時より尊く思えた)) == == == == == == == == == == 貴女は僕に貴女自身はくれなかった。 でも、ただ1度、1人だけが得られるものをくれた。 あぁ、貴女が居なくなったこの本丸はどうなるのでしょう。 ……いえ、そんなことはもうどうでもいいことです。 貴女は私とは行けないとおっしゃった。 だから、私が貴女の側に行くことはきっと許してくださるのでしょう ← | |