X +1 == == == == == 『あ、叶華ー? ちょっとお願いがあるんだけど』 叶華は昨日に続き、今日も4区に足を運んでいた。 目的地も同じで、昨日と同じように扉を開いた。 「あ、――いらっしゃい、叶華ちゃん。 今日はどうしたの?忘れ物でもした?」 ウタの真っ赤な赫眼に出迎えられる。 「ううん。 今日はイトリさんからの頼まれ事」 そういって預かった紙袋を見せる。 「あぁ、もう届いたんだ」 それを受け取り、お礼の珈琲を振る舞う。 「なんだかイトリさん、外せないお客さんが来たって…」 「へぇ、そうなんだ」 ウタはそれには大して興味を持たず、マグカップを持つ叶華を見つめるばかりだった。 「あ、そうだ」 「?」 「3日後、用事がなかったら一緒に出掛けない?」 なんでも店を休むらしい。 依頼も済ませたし、たまの息抜きということだそうだ。 「うん、いいよ」 叶華もその日はまだ予定が入っていなかった。 「よかった。楽しみにしてるよ」 ウタのあまり変わらない表情が少しだけ嬉しそうに見えた。 「そろそろ暗くなるし、送るよ」 「ありがと」 断っても無駄だろうから遠慮はしなかった。 「おやつでも買ってあげようか?」 通りを歩いているとウタがふと足を止めて言った。 ウタの見ている先を追えば、そこにはケーキ屋があった。 「え、いいよ。 嫌いでしょ?におい」 「……」 さ、行こう行こう、と腕を引っ張って歩き出す。 無意識ではあったが、初めて叶華から触れた瞬間だった。 「――じゃあ花は?」 ウタが止まったため止まるしかなかった。 「え?」 「花。あれはにおいも嫌いじゃないから」 意外だなと思っていたら手を引かれた。 もう買いに行く気らしい。 「ありがとう」 ((本日の共有時間:3時間)) == == == == == == == == == == 「これとかどう?」 「きれー。でもすぐ枯らしちゃいそう……」 「枯れたら次の買ってあげるから」 「それは花に悪いよ…」 「そう?あ、叶華ちゃんにはこの白い花も似合うね」 「う〜ん……自分に似合うとか似合わないとかあんまり分かんないなぁ」 「似合ってるよ。夏だからこの黄色い花も映えて見えるね」 ← | → |