退屈なほど普通
== == == == ==


「どうかしましたか?」

「ああ光秀」

庭にしゃがんでいる空良の背中を見つけて声をかければ、優しい笑顔を浮かべてこちらを振り返った。



「見て、綺麗な花が咲いていたの」

その白い手には紫色の花が摘まれていた。

「おや本当だ。何という花でしょうか」

「さあ?花には疎くて」

でもこれは気に入ったの、と微笑む空良。
血さえ見なければ至って普通の女子なのだ。


「ですが、手折ってしまってはあとは枯れるだけですね」

「そうなの?不便なのね」

空良が残念そうな顔をするから何か提案しようと考える。





「…――押し花にでもしますか?」





「そうねぇ……。
光秀は作れるの?」

「一応は……得意ではありませんがね」

そういうのは帰蝶の方が得意だろうと教える。

「なら帰蝶にでも手伝ってもらうわ。
できたら、そうね……光秀、もらってくれる?」

見上げてくる瞳に心が踊る。

「おや、いいのですか?」


「うん。失敗するかもだけれど」

「ありがたくいただきますよ。
貴女からの贈り物ですから」

それが例え失敗作だとしても。

空良が作ったのだと言うのなら、宝物に等しい。

「そう。じゃあ待っててね」

ととと……と小走りで言ってしまう。





その後ろ姿を見て少しだけ後悔する。

折角戦がないというのに話す機会を手放してしまった。
どうせなら一緒に作ればよかった。


勝家にでもあったら八つ当たりしてしまう。

そう思い、小石を蹴った。


((その差が私を引き付けるのです))
== == == == == == == == == ==
「帰蝶、押し花を作りたいの」
「手伝ってほしいのね。分かってるわ」
「失敗したら光秀、残念がるかな?」
「……光秀にあげるの?」
「うん。さっき聞いたらありがたくもらってくれるって」
「空良、あまり光秀に餌付けしては駄目よ」
「??私、料理はできないわ」


|



TOP