心配なので手元に置きたいようです
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『仕事しなきゃ』


ソラの丸っこい字を見てため息をつく惣右介。

紙に書かれたそれは、ソラの言葉そのものだ。

「やっぱりダメだよ」

すると頬を膨らませるソラ。
再び筆に手を伸ばす。



『声が出ないだけで元気だもん』



紙を押し付けてくる。

「大人しくしてなさい」

その瞬間、ソラが椅子に座った。

何かに縛られているように体を横に揺らしている。

惣右介が鏡花水月を使ったのだ。
今のソラは、椅子に縛り付けられているように感じている。

「(まさかこんな形で使うことになるなんて…)」










膝の上に置いた本を捲るソラ。


自由な手でそれはもう不自由そうにしている。
何ともおかしな光景だ。

退屈を持て余していたソラ。

文句を言って煩かったので、本を与えたのだ。

読書好きなソラはすぐに本に食い付いた。

「(これで暫くは……)」



だが長くは続かなかった。
ソラは読むスピードが早く、もう読み終わってしまったようだ。

体を横に揺らして椅子を暴れさせる。

そのせいでガタガタという音が煩い。


「ソラ、少し静かにしてくれないかい」

なら解放して、と顔に書いてあった。





「……あんまり騒ぐと虐めるよ…?」





首を傾げているソラは分かっていないようだ。

惣右介は小柄な体を簡単に抱き上げた。
同時に鏡花水月による偽りの拘束を解く。

「!」

ソラはびっくりしたようだ。

「  」

なに、と声もなく口が動く。



惣右介はソラを抱き締めた。

「声を…我慢できない状況に陥ったら、出るようになるかな?」



何となく身の危険を感じ、身を引くソラ。

だが惣右介の腕に阻まれてあまり離れられない。

「ねぇ、ソラ…」

囁きかけてくる声が少し低くなった。
ソラはブンブンと首を痛めそうなくらい横に振った。




「ふ、…冗談だよ」




小さく笑うと、ソラを解放した。

「ここでなら仕事してもいいよ」

すると筆を持ったソラ。
真面目だなぁと思いながら書類を渡す。

いそいそと筆を走らせ始める。

「はい、お茶。
原因は分からないけど、喉は潤わせておかないと」

すると満面の笑みで返された。





「(うん、やっぱり確証もなく手荒なやり方はしないほうがいい。ソラに嫌われるのも御免だからね)」


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「ソラ、今日は書類配達に行かなくていいから」
『でも、』
「いいから。他の隊士に任せよう」
『外出たい』
「椅子に縛り付けてもいいんだよ?」
『愛が痛い』
「愛って分かってるなら大人しくしてること」


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