藪医者
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「じゃあ注射するねー」



後ろ手に拘束されていなければ、今すぐ首を跳ね飛ばすなり心臓を抉り出すなりしただろう。

だからこそ自由の利かない両手が恨めしい。


ブチと皮膚を突き破る音が近く聞こえた。

すぐに喉が熱を帯びる。

ギュルルルルルとすごい勢いで血が抜かれていく。


確かに刺して血を抜くのは同じかもしれない。
だが吸血と注射を同一視できるほど退屈はしていない。






グッ


「はい、暴力はんたぁーい」



殴りかかろうとした腕は掴まれてしまった。

「んー、血はいつも通りだし、暫くしたら声も出るようになるよ」

多分ね、と付け足された。

勝手に医者を気取ったくせに役に立たない。





ソラは自分の血を指先で掬うと、フェリドの部屋の壁に大きく文字を走らせた。






医者に送る、不名誉な文字を。

―藪医者―


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『さて、密告者は誰かなー』
「わぁ、これちゃんと落ちるかな…」
『クローリー君かな。クローリー君だよね』


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