![]() == == == == == 「じゃあ注射するねー」 後ろ手に拘束されていなければ、今すぐ首を跳ね飛ばすなり心臓を抉り出すなりしただろう。 だからこそ自由の利かない両手が恨めしい。 ブチと皮膚を突き破る音が近く聞こえた。 すぐに喉が熱を帯びる。 ギュルルルルルとすごい勢いで血が抜かれていく。 確かに刺して血を抜くのは同じかもしれない。 だが吸血と注射を同一視できるほど退屈はしていない。 グッ 「はい、暴力はんたぁーい」 殴りかかろうとした腕は掴まれてしまった。 「んー、血はいつも通りだし、暫くしたら声も出るようになるよ」 多分ね、と付け足された。 勝手に医者を気取ったくせに役に立たない。 ソラは自分の血を指先で掬うと、フェリドの部屋の壁に大きく文字を走らせた。 医者に送る、不名誉な文字を。 ―藪医者― == == == == == == == == == == 『さて、密告者は誰かなー』 「わぁ、これちゃんと落ちるかな…」 『クローリー君かな。クローリー君だよね』 ← | → |