![]() == == == == == 「……」 亜門は仏頂面で街を歩いていた。 『ところであのお転婆娘はどうだ?』 あの日、特等の丸手に命じられて向かったコクリア。 そこで再会したのは育ての親。 SSレート喰種、ドナート・ポルポラ。 あの男と顔を合わせて以来、気分が悪い。 気晴らしに好物のドーナツでも買おうかと街に出たのだ。 「っ!」 信号で立ち止まっていた時。 向こうの歩道を走る夢叶を見付けた。 懐かしい相手に足に力が入る。 しかし、ドナートの言葉が蘇り力が抜けた。 「(追いかけてどうする…)」 亜門と違い、保護された後、アカデミーに入らなかった。 「(折角喰種から離れられたんだ…」 喰種に恨まれる存在が近付くべきでないと道を変えた。 ただ、十何年も顔を合わせていなかったため安堵はある。 喰種を恨まないのか、とは思う。 だが、そのために危険な仕事を求めるのは違うと思った。 孤児院では多くを失った、奪われた。 夢叶は残った数少ない1人。 「…幸せそうで良かった……」 ((一生喰種と交わらないことを願う)) == == == == == == == == == == 「項垂れてどうかしたのか?」 「夢叶…彼氏いたです……」 「(夢叶……前も言っていた名前だな)」 「こんな顔で、こんな服着てて、目が綺麗だったです〜」 「(これは……夢叶…?)」 「あ、亜門さんも交番で見てたですね〜」 「(あの時のか……)いや、お前が怪我させた人の対応で…」 「もったいないです〜」 ← | → |