03
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「……」

亜門は仏頂面で街を歩いていた。





『ところであのお転婆娘はどうだ?』





あの日、特等の丸手に命じられて向かったコクリア。

そこで再会したのは育ての親。
SSレート喰種、ドナート・ポルポラ。

あの男と顔を合わせて以来、気分が悪い。

気晴らしに好物のドーナツでも買おうかと街に出たのだ。


「っ!」


信号で立ち止まっていた時。

向こうの歩道を走る夢叶を見付けた。

懐かしい相手に足に力が入る。
しかし、ドナートの言葉が蘇り力が抜けた。

「(追いかけてどうする…)」

亜門と違い、保護された後、アカデミーに入らなかった。



「(折角喰種から離れられたんだ…」


喰種に恨まれる存在が近付くべきでないと道を変えた。

ただ、十何年も顔を合わせていなかったため安堵はある。

喰種を恨まないのか、とは思う。
だが、そのために危険な仕事を求めるのは違うと思った。

孤児院では多くを失った、奪われた。

夢叶は残った数少ない1人。





「…幸せそうで良かった……」




((一生喰種と交わらないことを願う))
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「項垂れてどうかしたのか?」
「夢叶…彼氏いたです……」
「(夢叶……前も言っていた名前だな)」
「こんな顔で、こんな服着てて、目が綺麗だったです〜」
「(これは……夢叶…?)」
「あ、亜門さんも交番で見てたですね〜」
「(あの時のか……)いや、お前が怪我させた人の対応で…」
「もったいないです〜」


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