![]() == == == == == 朝、夢叶は焦っていた。 ソファで2人、落ちないようにくっついて眠った。 必然的に体には腕が回されたままで、睡眠下でも解けないくらい強く固定されていた。 起こそうと体を揺すってみるが、結果拘束が強まっただけ。 中途半端な動きが、逃げようとしていると認識されたようだ。 「ウタぁ………起きて……」 もう限界で、泣きそうな声が出た。 その声に反応を示し、うっすらと目が開く。 「ウタぁ……」 「……んー………?」 起きたことに気付いた夢叶はバッと顔を上げた。 「ウタ、トイレ……!」 きつく固定されたままで動けなかったのだ。 「トイレ………?」 眠そうに返したウタは、のろのろと起き上がった。 「ちょ……ウタ!? 自分で行くから!」 放して、と言ったつもりだったのだが、抱き上げられた。 覚束ない足取りでトイレの前まで連れてこられた。 「ん、トイレ……」 そこで漸く床に足を降ろすことができた。 「えーっと………これじゃ扉閉めれないんだけど……?」 「…手は繋いでないとダメ……」 我慢の限界で、仕方なく便座に腰を下ろした。 恋人が手を繋いでトイレの外と中なんて不思議な光景だ。 「う…ウタ、耳塞いでてよ……!」 「片手使ってるから無理だよ……。 それに、どうせ喰種の耳じゃ聞こえるから」 「っーーバカ!」 水の無駄遣いではあったが、1度流すことにした。 夢叶とて女。 少しの音でも恋人には聞かせたくはない。 「あれ、…もういいの……?」 「バカ……」 寝惚け眼で夢叶の頭を撫でる。 全然気にしていないのか、半分寝ているのか……。 「夢叶、ちゅーして…」 「ヤ」 だが結局ウタからしてくるのでそのお願いに意味はない。 部屋に戻ると、膝の上に座らされ、優しく抱き締められた。 「ーー夢でね、夢叶にぼくの赤ちゃんができたんだ……。 もし本当にそーなったら………夢叶はどう思う…?」 「………ウタとの時間が減るのは嫌…」 「夢叶も意外と独占欲が強いね…。……うん、…ぼくも夢叶との時間が減るくらいなら赤ちゃんはいらない」 もう1度、今度は先程より深く、熱が唇を割って入ってきた。 たまにはこんな時間があってもいい。 そう思えるほど、夢叶はウタに惹かれていた。 「もう一眠りする……?」 「んー、今日はあんていくに行くから……」 すると抱き締める腕の力が強まった。 「…またぼくを置いてくの……?」 「ならウタも一緒に行こうよ」 蓮示もいるし、と言うが首を横に振られた。 「ダメ……まだカネキくんのマスクが仕上がってないから…」 変なところで真面目だ。 ウタが情に訴えるような目で見てきた。 「そんな目で見ないでよ……。 もう、わかった………もう一眠りしよ」 「うん……ありがと、夢叶」 (("好き"も"イヤ"も貴方が愛しいから)) == == == == == == == == == == 「でも、もし赤ちゃんができたらどうしよ……?」 「どうしよって言われても……」 「ぼくが喰べちゃおうか…?」 「それは絶対ダメ!」 「どうして?…証拠も残らないよ……?」 「証拠とかの問題じゃないの!」 「怒らないでよ……。 それに、人間と喰種の赤ちゃんなんて滅多に妊娠しないから」 ← | |