03
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「ぁ、…」


そこには手足をもがれた女性の死体があった。

暗闇でよく見えないが浴室の床はきっと真っ赤だろう。



「夢叶いたんだ…気付かなかった……」



ウタが近付いてくる。

理由はないが、いつもと様子が違うのは確かだ。

「ど、したの……その人…」

「あぁ…ちょっとそういう気分だったから…」

頬に触れたウタの指先はいつもより熱かった。
でも、対照的に発するその声は低くて冷たかった。


「ご…ごめん、機嫌悪かったんだ…私もう帰…――」

相手の都合も考えずに来たことを謝り、背を向けたとき。

首筋を大蛇が這ったようだった。

気付いた時にはウタの腕の中で、体は少しも動かない。





「――だめ……帰さない…」





耳元で聞こえた声にイトリの言葉を思い出す。
だが携帯電話の入ったバッグは部屋に置いてきてしまった。

いつもなら優しいその腕も、今は息苦しいほど締め付けてくる。

命の危機とまではいかないが、身の危険は感じる。


「ウ、タ……苦し…」

後ろのウタを見ようとするが、思うように首が回らない。

「苦しい?…痛くて逃げられない…?」

「逃げない、からっ…」

骨が軋むほどの力。
今更ながらにウタが喰種であることを身をもって知る。


「じゃあ、もっとだね…。
もっと痛くして……動けなくなったらずっと一緒だね…」

痛くて痛くて声も出ない。

どこか骨が折れているのではないか。
少なくとも、青痣が出来ることは間違いない。





「助け…て、……お兄ちゃ…」




((私を支えてくれる人))
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「、…」
「先輩?どうかしましたか?」
「…いや、…誰かに呼ばれた気がした」
「?空耳じゃないですか?」
「……」
「あ、もしかして彼女さん?先輩が仕事ばかりしているから」
「そんな人はいない」


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