04
== == == == ==

「男か女かもハッキリしないし、おじいちゃんって話もあるじゃん?」

「ぼくは小っちゃい子供って聞いたよ」

このように、当時から目撃例は滅茶苦茶なのだ。

ウタは会いたいなんて思わない方がいいかも、と忠告する。

「"隻眼"に関してハッピーな話題なんて聞いたことないから。食欲旺盛で共喰いもするとかさ…」

それにはイトリも恐ろし、と言っている。




「カネキくんのことを他の"喰種"が知ったら、君が噂の"隻眼"だって勘違いしちゃうかもね……」




流石にそれは金木も御免のようだ。

元々目立ちたがりタイプではない。

「西尾先輩に襲われた時は何も気付いてなかったみたいですよ」

「西尾……ああ、ニシキね、勉強家の秀才ボーイだよね。
上井の薬学部って人間でも難しいでしょ」

つまりは西尾の努力が見える。

喰種は"綱"を細くしないためにも学校へはあまり通わない。

そのため学力も良いとは言えない者が多い。

人間でも難関なら、喰種にとってはさらに高い壁と言えるのだ。

「若いから知らないんだよ。
結構前だもん、隻眼の"喰種"が話題に上がったのって」

どちらにせよ、金木の中に"隻眼の喰種"の存在が焼き付いた。


「今はどんなことが話題になっているんですか?」

「そりゃあなたのことに決まってるじゃない!」

イトリは金木の背中をバンバンと叩いて言った。





「彗星のように現れた隻眼の"喰種"金木研。

トラブルメーカー神代リゼの謎めいた死も相まって、情報マニアの間では日々憶測が飛び交ってるのだよ、君…」





その言葉の中に聞き逃せない内容があった。

「"謎めいた死"って、あれは事故で…」

「あら……まったく芳村さんも罪だよねー。
な〜んにも教えてあげないんだから…」

蓮示が反応を示す中、イトリは意味深な笑みを浮かべていた。


「あれが本当に只の事故だと思っておるのかね、金木研くん?」

だとしたら、現場の安全管理が疑われる。
不必要な鉄骨を上に積んでおく理由はない。

「あの日、事故現場のビルの上に人影を見たって人が居てね…」

その後に鉄骨落下事故…。

イトリの言う通り、怪しさ爆発だ。





「じゃあ"あれ"は偶然じゃなくて…」

「そ、誰かがリゼを殺した」





金木は蓮示に、店長はそれを知っていたのか聞いた。

「…芳村さんが黙っていたのはお前を混乱させない為にだ…」

「(じゃあ僕は…リゼさんを殺す計画の為の"餌"?
"喰種"になったのは偶々それに巻き込まれたせい…?)」

考え始めればキリがない。

「何だよそれ……一体誰がそんなこと…」



「見当はつきそうなもんだけどね」



「!誰ですか!?誰がそんなこと…」

しかしそれ以上は言えないと言う。

イトリの店には人間・喰種問わず色々なネタが集まってくる。
そして彼女は、情報というものの価値を正しく理解している。

「タダで教えてあげるわけにはいかないわね〜」

「じゃ…じゃあどうすれば教えてくれるんですか?」


「知りたいよね?自分のことだもん。
ーー交換よ」

ちょうど欲しい情報があるらしい。

それと同時に、役に立つ情報も得ていた。




「カネキくん、今美食家クンにつきまとわれてるでしょ?
"喰種のレストラン"について、美食家から探って」





喰種のレストランと言われても皆目見当もつかない。

「"喰種"のレストラン?」

「そう!会員制なのか、秘密サロン的なモノなのか。
どうしても入りたい〜ってゴネてるお客サマがいてね」

都内にそういう店がある事実だけは掴んでいる。

だが、ガードが固いのだ。

"喰種の"というだけあって簡単に入り込めないようになっている。

「でも例の美食家クンなら知ってそうなモンでしょ」

食に強いこだわりを持つからこそ、と考えたのだ。


「君に頼むのが一番手っ取り早いかなーって。
月山クンのお気に入りみたいだし?」

数日前のやり取りから、気に入られたのかと考えてみる。

だがどうにも月山は分かりにくかった。

「解明すりゃ、あたしもそのお客からお心配りがあるし、君も知りたいことを知れる。みんなハッピー」


((情報の有用性))
== == == == == == == == == ==
「お気に入りかは……」
「間違いなく気に入られてるよ!」
「そう…ですかね?」
「少なくとも、あたしは気に入られたくはないけど」
「え…?」
「ぼくも別にいいかな…」
「えぇ?」
「……俺も結構だ…」
「僕って損してるんですかね…」


|



TOP