![]() == == == == == 「男か女かもハッキリしないし、おじいちゃんって話もあるじゃん?」 「ぼくは小っちゃい子供って聞いたよ」 このように、当時から目撃例は滅茶苦茶なのだ。 ウタは会いたいなんて思わない方がいいかも、と忠告する。 「"隻眼"に関してハッピーな話題なんて聞いたことないから。食欲旺盛で共喰いもするとかさ…」 それにはイトリも恐ろし、と言っている。 「カネキくんのことを他の"喰種"が知ったら、君が噂の"隻眼"だって勘違いしちゃうかもね……」 流石にそれは金木も御免のようだ。 元々目立ちたがりタイプではない。 「西尾先輩に襲われた時は何も気付いてなかったみたいですよ」 「西尾……ああ、ニシキね、勉強家の秀才ボーイだよね。 上井の薬学部って人間でも難しいでしょ」 つまりは西尾の努力が見える。 喰種は"綱"を細くしないためにも学校へはあまり通わない。 そのため学力も良いとは言えない者が多い。 人間でも難関なら、喰種にとってはさらに高い壁と言えるのだ。 「若いから知らないんだよ。 結構前だもん、隻眼の"喰種"が話題に上がったのって」 どちらにせよ、金木の中に"隻眼の喰種"の存在が焼き付いた。 「今はどんなことが話題になっているんですか?」 「そりゃあなたのことに決まってるじゃない!」 イトリは金木の背中をバンバンと叩いて言った。 「彗星のように現れた隻眼の"喰種"金木研。 トラブルメーカー神代リゼの謎めいた死も相まって、情報マニアの間では日々憶測が飛び交ってるのだよ、君…」 その言葉の中に聞き逃せない内容があった。 「"謎めいた死"って、あれは事故で…」 「あら……まったく芳村さんも罪だよねー。 な〜んにも教えてあげないんだから…」 蓮示が反応を示す中、イトリは意味深な笑みを浮かべていた。 「あれが本当に只の事故だと思っておるのかね、金木研くん?」 だとしたら、現場の安全管理が疑われる。 不必要な鉄骨を上に積んでおく理由はない。 「あの日、事故現場のビルの上に人影を見たって人が居てね…」 その後に鉄骨落下事故…。 イトリの言う通り、怪しさ爆発だ。 「じゃあ"あれ"は偶然じゃなくて…」 「そ、誰かがリゼを殺した」 金木は蓮示に、店長はそれを知っていたのか聞いた。 「…芳村さんが黙っていたのはお前を混乱させない為にだ…」 「(じゃあ僕は…リゼさんを殺す計画の為の"餌"? "喰種"になったのは偶々それに巻き込まれたせい…?)」 考え始めればキリがない。 「何だよそれ……一体誰がそんなこと…」 「見当はつきそうなもんだけどね」 「!誰ですか!?誰がそんなこと…」 しかしそれ以上は言えないと言う。 イトリの店には人間・喰種問わず色々なネタが集まってくる。 そして彼女は、情報というものの価値を正しく理解している。 「タダで教えてあげるわけにはいかないわね〜」 「じゃ…じゃあどうすれば教えてくれるんですか?」 「知りたいよね?自分のことだもん。 ーー交換よ」 ちょうど欲しい情報があるらしい。 それと同時に、役に立つ情報も得ていた。 「カネキくん、今美食家クンにつきまとわれてるでしょ? "喰種のレストラン"について、美食家から探って」 喰種のレストランと言われても皆目見当もつかない。 「"喰種"のレストラン?」 「そう!会員制なのか、秘密サロン的なモノなのか。 どうしても入りたい〜ってゴネてるお客サマがいてね」 都内にそういう店がある事実だけは掴んでいる。 だが、ガードが固いのだ。 "喰種の"というだけあって簡単に入り込めないようになっている。 「でも例の美食家クンなら知ってそうなモンでしょ」 食に強いこだわりを持つからこそ、と考えたのだ。 「君に頼むのが一番手っ取り早いかなーって。 月山クンのお気に入りみたいだし?」 数日前のやり取りから、気に入られたのかと考えてみる。 だがどうにも月山は分かりにくかった。 「解明すりゃ、あたしもそのお客からお心配りがあるし、君も知りたいことを知れる。みんなハッピー」 ((情報の有用性)) == == == == == == == == == == 「お気に入りかは……」 「間違いなく気に入られてるよ!」 「そう…ですかね?」 「少なくとも、あたしは気に入られたくはないけど」 「え…?」 「ぼくも別にいいかな…」 「えぇ?」 「……俺も結構だ…」 「僕って損してるんですかね…」 ← | → |