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「夢叶も言ってたよ。カネキくんはいつもフラフラ揺れて危なっかしいから目を離せないって」



金木にはいつか倒れてしまいそうな不安定さがある。

だから、躓かないように願う人も、躓く瞬間を待つ人もいる。

「…ぼくは芳村さんの事はわからない」

ウタでさえ、10年近く前に20区に来て、"あんていく"の看板をあげ、20区の喰種をとり仕切っていることくらしか知らない。


「でも蓮示くんの事なら少しわかる。…それでもいい?」




















「ぼくは昔、
―――今の芳村さんみたいに4区の仕切りをやっていたんだ」






金木は微かに目を見開いた。

だがありえなくもないと納得する。

かつて稽古をつけてくれた蓮示は強かった。その蓮示と4区を滅茶苦茶にするほど暴れたなら実力もあったのだろう。

滅茶苦茶になっても誰も止めなかった。

となると止められる者がいなかったと考えるのが妥当。

温厚な芳村を仕切り役の基準と考えるとそうなった。


「進んで申し出たわけじゃないけど、ほかに強い人がいなかったから」

4区は昔から喰種の多い危険地区。

仕切るにしても力でまとめるのが当然だった。

「あの頃は夢叶もいなかったし、若かったから。
いろいろやってたなぁ」

懐かし気に話しているが感慨深げではなかった。

「でもやっぱりまとめ役は面倒でね、そんな退屈してる時に蓮示くんが4区に来たんだ」




――孤独な流れ者喰種(ワタリガラス)




「規律も何もかも無視で喰場荒らしに"共喰い"」

まとめ役として何度か説き伏せようと出向いたらしい。

「でも腕っぷしも強くてね」

そう語るウタは先程より楽し気だ。

「本気で殺り合うと2人ともしんじゃうだろうから、いつも決着もそこそこに手を引いていた」

そうして何度も顔を合わせていると興味が湧いてきたらしい。



"この喰種はいったい何者なんだろう"と。


((今さら、って感じだけどね))
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「蓮示くんのせいでぼくイトリさんとかに笑われたし」
「ぇ、どうしてですか?」
「さぁ?まとめ役が勝てないってのが面白かったんじゃない?」
「酷いですね…」
「あの頃の蓮示くんに比べればマシだよ。
こっちが説得しようってのにお構いなしに赫子振り回すんだから」
「。。。四方さんってそういうタイプだったんですね…」
「そ。人は見かけによらないよね」
「……(ウタさんが言うと妙に説得力あるなぁ)」


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