![]() == == == == == 夢叶が眠りにつき、数十分後…。 コンコンと店の扉を叩く者がいた。 「……こんばんは、ウタさん」 金木だった。 「やぁカネキくん。 ……マスクでも壊れた?」 「――……」 どこか思い詰めた様子の金木。 迎え入れたウタはもう1脚、椅子を用意した。 「――僕は……"アオギリの樹"を潰せば平穏に暮らせると思っていました。敵がハッキリさえしていればそのために強くなれる」 そのためにあの後、居場所であったあんていくも離れた。 「…でも」 蘇るのは嘉納との再会。 「嘉納先生に『"アオギリ"を生んだのは芳村店長』だと言われてわからなくなりました」 金木には蓮示がリゼを連れて行った理由も分からない。 「"あんていく"こそ僕にとっては………」 それ以上言葉は続かなかった。 金木が俯いてしまったからだ。 数拍の後、再び顔を上げる。 「こんな風に僕の気持ちが揺らいでたんじゃこれ以上強くなれない。みんなを守るどころか傷付けてしまう……」 やはり先日の、万丈を負傷させたことを気に病んでいるようだ。 それもそのはずだ。 金木は守るために力を手に入れ、万丈たちの同行も許可した。 その優しさゆえ、間違った力の使い方を嫌う。 「ウタさんに聞きたいんです。 "あんていく"の事、四方さんの事、店長の事。 僕は……わからない事だらけだ…」 それまで静かに耳を傾けていたウタ。 作りかけのマスクに向き直るが手はつけない。 「…ぼくはマスク屋だからお客さんの秘密は話せない」 けど、と続ける。 「カネキくんは特別なお客さんだから助けになってあげたいな」 ((強くて脆い、優しい君だから)) == == == == == == == == == == 「ごめんね、お店で。いま夢叶が寝てるから」 「――…お二人は凄いですね…。 僕は…疑り深くて、……でもウタさんたちはお互い信じてて…」 「ん〜…ぼくだって夢叶に探り入れることあるよ? でも、夢叶には夢叶だけの秘密もあるんだって割り切ってるから」 「……やっぱりすごいです…」 「何て言うか…心の隅っこに間借りしてるみたいな感じ」 「夢叶さんならずっと貸してくれそうですね」 ← | → |