![]() == == == == == 「おはよう。 全然起きないから心配したよ……」 ベッドに上がってきたウタに抱き締められる。 「ぁ、うん、おはよう」 噛み痕だらけの手を気にしないように抱き締め返す。 シャワーを浴びてきたのか、シャンプーの香りがした。 「この間はごめんね……。 立てる?」 離れたウタの顔が少し不安気で、足腰の痛みや怠さがないのを確認し、ニカッと笑った。 「よく覚えてないけど、全然大丈夫だよ!」 しかし逆効果だったようだ。 ウタは更にしゅん……として、夢叶の手を取った。 「ホントにごめんね…。 ………痛かったよね…」 手の甲の噛み痕をなぞられ、背筋がぞくりとした。 珍しく真摯に謝っているのに悪いが、本当に記憶にない。 「だ、大丈夫だよ、こんなのすぐ治るから!」 青痣や噛み痕なんて体についた傷は、心に付けられた傷なんかよりずっと早く治り、消えるのも早い。 「それと……ぼく、ゴム付けなかったんだ…」 腰をさすられてまさか、と思う。 「あー……もしかして寝ちゃった?」 「覚えてない?」 夢叶は毛布にくるまり顔を隠した。 「(…私知らない間にウタに初めてあげちゃった?)」 覚えていない、というのはとても厄介だ。 何があったのか、良からぬ想像ばかりが広がっていく。 「忘れちゃうくらい嫌だった…? そうだよね……ごめんね、あんなことして…」 慌てて顔を出す。 放置して置いたらウタの調子がおかしくなりそうだ。 それに、覚えていないことがショックなだけで、いつかそういう日が来る気はしていた。これでも恋人だ。 避妊していない、と言うところに若干の危機感はあるが。 「嫌じゃないよ、ちょっとびっくりしただけ」 1回くらい大丈夫、なんて若者特有の楽観で済ませようとする。 「でも、……たぶん10回以上やっちゃったよ…?」 「……(あーうん、とんでもなくマズい気がする)」 ((現実は残酷だ)) == == == == == == == == == == 「で、でも喰種と人間の赤ちゃんってできにくいんだよね?」 「そうだけど……できてたら夢叶嫌でしょ?」 「嫌…ではないけど、私人間喰べる度胸ないし……」 「ぼくは嫌だな……夢叶取られるから」 「(じゃあゴム付けて欲しかったな…)」 結局話が逸れていく…。 ← | → |