![]() == == == == == がむしゃらに走ったせいで、知らない場所にいた。 空気は生暖かく淀んだ、薄暗い路地。 夢叶は乱れた呼吸を整えていた。 「…あの人……」 知らない人だ。 だが、本能が逃げろと叫んだ。 孤児院の終わりの時より怖かった。 足が震えている。 走った疲労だけでないのは夢叶が一番分かっている。 立っていられず、壁にもたれて座り込んだ。 「――1人でこんな所に居ちゃ危ないって教わらなかったかなぁ。 なァ、お嬢ちゃん」 驚いて顔をあげる。 路地から出る道を塞ぐように立つ男。 その目は赤が爛々と輝いていた。 「…喰……種…」 思わず溢した言葉に男はにんまりと笑った。 「ご名答。喰種をあっさり受け入れられる人間はそうそういねぇぜ。お嬢ちゃん、こっち側の人間かァ?」 夢叶は立ち上がり逃げ道を探した。 「ははっ、その反応は違ぇな!」 なら遠慮は無用、と襲い掛かってくる。 それを寸でのところで躱し、逃げ出す。 「ははは!逃げ足の速ぇうさぎは好きだぜ!! 疲れて動けなくなったところをじっくり喰ってやるからよォ!」 夢叶は走って走って、走り続けた。 ((ハンティングの兎の如く)) == == == == == == == == == == 「すげェ!あんたどんどん匂いが増してやがる!!」 「ほらもっと逃げてみろよ!!喰っちまうぜ!?」 「最高だ!なんて美味そうなんだ!!俺に喰われろ!!!」 「じっくり、その綺麗な顔が歪むように甚振ってから喰ってやるからよ!!」 ← | → |