02
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あの日、喰種に襲われたあの日。
喰種から逃げるより前に、誰かから逃げていた。





「あのっ、お兄ちゃんが怪我したって聞いて…!」



夢叶はCCG本局の受付にいた。

「あ、あの、どちら様でしょうか?」

部外者を通すわけにはいかない受付。

困惑しながらも確認を取る。

「平子丈の、――家族です!」

そう言うと納得したようだ。


「はい、任務中に負傷したと聞いております。
現在はCCG傘下の病院で手当てを…」

「その病院ってどこですか…!?」

夢叶は焦っていたため、カウンターに強く手をついた。

「も、申し訳ありませんが一般の方はお通ししていません。
家族の方でしても正式な許可を取っていただかなくては…」

そんなもの、まだ若い夢叶に取れるはずもない。


「ぅ……っ…」


嗚咽を漏らして座り込む。

心配だった。心の底から。

身寄りのない自分に居場所をくれた人。
怪我をしたと聞き、今すぐにでも会いに行きたかった。





「――どうしましたァ?」





振り返った先にいたのは黒いコートの男。

捜査官らしいが、白いコートを着ていない。

「こちらの方が平子捜査官に面会したいようでして…」
「無理じゃないですか〜?家族でも義理、じゃ」

男の言葉には棘のような悪意があるように感じた。

「でもまぁ、無事らしいですよ?サスガCCGの執刀医」


夢叶は無意識の内に震えた。
理由は分からないが、此処にいてはいけないと思った。

近付いてくる男から逃れるように逃げ出した。




((黒き善意))
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「ぁ…ちょっと、貴女…!」
「いいですよ、何か用事があったみたいですし」
「しかし…」
「でも逃げられるとちょっとキズつくなぁ〜」


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