![]() == == == == == あの日、喰種に襲われたあの日。 喰種から逃げるより前に、誰かから逃げていた。 「あのっ、お兄ちゃんが怪我したって聞いて…!」 夢叶はCCG本局の受付にいた。 「あ、あの、どちら様でしょうか?」 部外者を通すわけにはいかない受付。 困惑しながらも確認を取る。 「平子丈の、――家族です!」 そう言うと納得したようだ。 「はい、任務中に負傷したと聞いております。 現在はCCG傘下の病院で手当てを…」 「その病院ってどこですか…!?」 夢叶は焦っていたため、カウンターに強く手をついた。 「も、申し訳ありませんが一般の方はお通ししていません。 家族の方でしても正式な許可を取っていただかなくては…」 そんなもの、まだ若い夢叶に取れるはずもない。 「ぅ……っ…」 嗚咽を漏らして座り込む。 心配だった。心の底から。 身寄りのない自分に居場所をくれた人。 怪我をしたと聞き、今すぐにでも会いに行きたかった。 「――どうしましたァ?」 振り返った先にいたのは黒いコートの男。 捜査官らしいが、白いコートを着ていない。 「こちらの方が平子捜査官に面会したいようでして…」 「無理じゃないですか〜?家族でも義理、じゃ」 男の言葉には棘のような悪意があるように感じた。 「でもまぁ、無事らしいですよ?サスガCCGの執刀医」 夢叶は無意識の内に震えた。 理由は分からないが、此処にいてはいけないと思った。 近付いてくる男から逃れるように逃げ出した。 ((黒き善意)) == == == == == == == == == == 「ぁ…ちょっと、貴女…!」 「いいですよ、何か用事があったみたいですし」 「しかし…」 「でも逃げられるとちょっとキズつくなぁ〜」 ← | → |