![]() == == == == == 叶華の手が持ち上がる。 ウタに触れようとするそれに、突き放すような気は無く、どこか縋るような、求めるようなそんな感じだ。 それに気付いたウタは、その手を取ろうと手を伸ばす。 「……、」 しかし、手が繋がる前に叶華の手から力が抜けた。 「叶華……?」 糸の切れた人形のようなそれを見つめていた。 しかし、何が起きたのか確かめようと叶華の顔を見た。 焦点を失い虚ろになった瞳を残し、息を引き取っていた。 涙は溢れなかった。 涙は全てを意味のないものにし、否定してしまう気がした。 ただ悲しみは波のように押し寄せ、倦怠感を残し引いていく。 ウタは叶華の手を拾い、叶華との別れを確認した。 そして、死後硬直が始まる前にその体を残さず喰らった。 指の1本1本丁寧に、血の一滴すら惜しむように。 腹は満たせても、心に開いた穴はどこまでも空っぽのままだ。 ただ1つ、叶華が作ったブレスレットだけ貰った。 服は捨てられても、2人の思い出の物だけ手放せなかった。 「……ごめんね、叶華…」 ((君のせいで、ぼくのせい)) == == == == == == == == == == 君に会わなければよかった。 でも、君に会わなかった"もしも"なんて想像できなくて。 君に会えてよかった。 だから、幸せが終わってしまうのも仕方ない。 ……やっぱり、君のいる未来を思い描くのは簡単だ。 ← | → |