訣別
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叶華の手が持ち上がる。

ウタに触れようとするそれに、突き放すような気は無く、どこか縋るような、求めるようなそんな感じだ。



それに気付いたウタは、その手を取ろうと手を伸ばす。

「……、」

しかし、手が繋がる前に叶華の手から力が抜けた。

「叶華……?」

糸の切れた人形のようなそれを見つめていた。
しかし、何が起きたのか確かめようと叶華の顔を見た。




焦点を失い虚ろになった瞳を残し、息を引き取っていた。




涙は溢れなかった。

涙は全てを意味のないものにし、否定してしまう気がした。
ただ悲しみは波のように押し寄せ、倦怠感を残し引いていく。


ウタは叶華の手を拾い、叶華との別れを確認した。


そして、死後硬直が始まる前にその体を残さず喰らった。
指の1本1本丁寧に、血の一滴すら惜しむように。

腹は満たせても、心に開いた穴はどこまでも空っぽのままだ。

ただ1つ、叶華が作ったブレスレットだけ貰った。

服は捨てられても、2人の思い出の物だけ手放せなかった。






「……ごめんね、叶華…」





((君のせいで、ぼくのせい))
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君に会わなければよかった。
でも、君に会わなかった"もしも"なんて想像できなくて。
君に会えてよかった。
だから、幸せが終わってしまうのも仕方ない。
……やっぱり、君のいる未来を思い描くのは簡単だ。


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