自覚
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「ーーってことなんだ……」

イトリのバーにやって来たウタはカウンター席に座り、昔馴染みのイトリに相談していた。

「やっぱりえっちとかしたいのかな……?」

「それ以前に彼女以外にそういう事言っちゃダメでしょ」

どうして?と心底不思議そうに見上げられる。

ため息をつきながら、血酒のグラスに手を伸ばす。





「ウーさんに常識が無いのは別として、………女の子が積極的に顔近づけてくるってことは、1つしかないでしょ。

ズバリ!キスしたいのよ!」





滑りかけたグラスを掴むウタ。

「キス……?」

「そうキス!叶華ちゃんはウーさんとキスしたいの!」

自信満々で言うイトリ。
一方でウタは気乗りしない様子。

「ありゃ、どうかしたの?」

「別に……」

顔を反らすウタにイトリは首を傾げる。



「もしかして、まだキスもしてない……とか?」



すると小さく頷かれた。

イトリからすれば雷を身に受けたような驚きだ。

「そりゃ叶華ちゃんが積極的になるワケだわ。
ってかどーしたのウーさん」

ウタの手からグラスを抜き取り、ぐいっと顔を近付ける。





「あのウーさんがまだ手も出してないなんて。

今さらキスに恥じらいも何も感じないでしょ。
叶華ちゃん飽きちゃった?」





するとムッとした表情でグラスを取り返す。

「飽きてない…………困ってるだけ…」

「なんで困るのさ?
キスなんてちょっとしたスキンシップでしょ」

その行為に対するイトリの考え方は軽いようだ。

そして話の限りではウタもそう思っている様子。



「…喰べものじゃない………」



「え?なんて?」

聞き返すが、ウタは血酒を飲むばかりで答えない。

「もぉ〜!」

イトリはカウンターから飛び出し、ウタの隣に座る。

「ほんとどーしたの。
蓮ちゃん病にでもかかったわけ?」

中々喋らず、はっきり言わないことを"蓮ちゃん病"と称す。







「叶華ちゃんに食欲抱いたら終わりだと思うから……」




((……抱いちゃいけない気持ち))
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「……ごちそうさま」
「ちょ……もう帰っちゃうの?」
「うん、叶華待ってるから……」
「かぁ〜お熱いねぇ♪キスしちゃえばいいのに」
「………」
「もう流れでやっちゃいなよ!」


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