作品としての自覚 == == == == == 「うん……終わったよ」 そう告げられ、起き上がる叶華。 「どう、でしたか?」 少し不安そうな顔をする。 「合格だよ。 ぼくの言いつけ、ちゃんと守ってるみたいだね」 「はい!」 嬉しそうな顔で答える。 「だって私はウタさんの"作品"なんですから…!」 自分の身体を自分の物ではないと自ら言う。 そんな叶華に、ウタは再びベッドへ腰掛ける。 「ウタさんに拾ってもらった時から私はウタさんの作品だから、ウタさんが思い描くものになりたいんです」 少し気恥ずかしげに言う叶華。 「……そう…」 ウタは従順な作品の頬を撫でた。 「それじゃあ……これからもぼくだけの作品でいるんだよ」 「はい!」 迷いのない返答。 ウタは叶華を抱き締め、横になった。 「ウタさん?寝るんですか……?」 「ううん寝ないよ。 ……でももう少しだけこうしてたい」 「はい、………ウタさんが望むなら、どんなことでも」 キッチンに立つ叶華。 その叶華を後ろから抱き締めているウタ。 「あの、ウタさん……?どうかしたんですか?」 ウタの珍しい行動に、肉を捌く手を止める。 「何でもないよ……続けて…」 そう促せば、包丁を動かすしかない叶華。 ウタが仕留めた人間を、手慣れた様子で捌いていく。 人間を解体することに欠片の嫌悪も感じていない。 大人になった今でも、習慣は抜けないのだろう。 「(こんな感じで仕事もしてるのかな……)」 人間に躊躇がないのだ。 作品と自負する自らを害する喰種にも容赦ないだろう。 指を這わせ唇を割ろうとすれば、叶華から口を開く。 暖かな舌に指を絡ませる。 指を抜けば唾液でまみれ、舐めれば甘い味がした。 ((生きる理由)) == == == == == == == == == == 「また食べないの……?」 「後で食べます。 アレはウタさんの気分を害しちゃうので」 「ぼく大丈夫だよ…?」 「じゃあ私が気にするのでダメです」 「そういうトコばっかり自分の意思持つね…」 ← | → |