最悪なアノヒ
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今なら分かる。
あの時、私の血を吸っていたのはあの吸血鬼だったこと。






「降りろ」

起きたらどこかの屋敷にいた。
そしてベッドの覆いはなくなっていた。

吸血鬼に言われるまま、絨毯の敷かれた床に足を下ろす。


「入れ」



肩を押されて大きな扉をくぐらされる。

「えっ…ちょっと……」

すると扉は閉じられ、真っ暗な部屋に1人残される。

「どこなの…?
何も見えない…」


視界ゼロの状態。

手探りで進んでみる。

裸足なので絨毯の感触がよく伝わってくる。
数歩進んでも何にも当たらない。





「あはぁ〜、いらっしゃいルカちゃん♪」





突然背後から聞こえた男の声。


「!!……あれ?」

急いで振り返るが、そこには誰もいない。

「こっち、こっち」
「!」

暗闇に慣れ切っていない瞳。

それでも、そこに何かが居るのは分かった。


「だれっ……!!」





「もうムリ♪
ルカちゃん、いい匂いさせすぎ」





大きな手に両肩を掴まれた。
頬にさらさらと細い何かが当たる。

そして、首筋に鋭い何かを突き立てられた。


「ーーっ!!!」

採血の時に刺される針とは比べ物にならない痛み。

ジュルッ
大事なものがが吸い出される感覚。

「(…吸、血鬼……!?)」

止めさせようと相手を押してみるがびくともしない。

「(…熱、い…!)」

体中が熱い。


「(あっ…つい………変な、感じ…)」




「ぷはぁ〜。
危ない危ない、止まらなくなっちゃうトコだった」










起きたら私の家族を殺した男がすぐそこにいた。


「フェリド・バートリー……」

「あはぁ〜、そんな顔しないでよ」


((目覚めたら日常はすぐそこにあった))
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「あの時のルカちゃんも可愛かったなぁ」
「………」
「あ、警戒心だらけの今も可愛いですよ?」
「………」
「虐めたくなる♪」
「…サイテー……」


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