無力のクノウ
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吸血鬼の視線が2人の間のルカに向いた。

遂に自分の順番が回ってきたのかと身構えるルカ。

吸血鬼が他の仲間に合図を出す。
すると、その仲間が手元の機械を操作した。



シュンッ

「…え、」



ベッドはカプセルのように覆われ、外界から一切を遮断してしまった。

ルカが起き上がってガラスのような"覆い"を叩く。

優たちもベッドから下り、それに近付く。
そして懸命に叩いてみるがびくともしない。

「優くんっ、ミカっ」

『ルカっ!』

必死にお互いの名を呼ぶが、壁に阻まれて手は届かない。


「おとなしくさせろ」

吸血鬼の命令に、仲間が再び機械を操作する。
今度はカプセル内にガスが噴出され、ルカの意識を奪う。


「おいっ、ルカ!起き――…」
「連れて行け」

固定が外されたそれは、容易く動かせる。

「待てよっ!ルカをどこに連れてく気だ!?」

「貴様には関係ない。退け」

行かすまいと道を阻み、吸血鬼の足に掴まる優。

「ゆ、優ちゃん…!」


「邪魔だ」
ドカッ


吸血鬼に蹴られ、優の身体が飛ばされる。

「優ちゃん!……うわっ」

受け止めようとしたミカだが、勢いを殺せず、優の下敷きになってしまう。

その間にも吸血鬼たちは広間を出ていこうとしている。

「うぅ……。っ、ルカ!」
「優ちゃん…、ルカっ」

起き上がって追いかけようとする。しかし、血を抜かれ貧血気味の2人は、すぐに膝をつくことになる。



「吸血鬼どもがっ…!」


((掴むは冷たき空のみ))
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「うぅ…ルカ…」
「ゆ…優ちゃん!?」
「地面が回る……」
「取り敢えずコレ飲んで!」
「ルカが……」
「貧血でフラフラの優ちゃんじゃ探せないよ!」


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