吸血鬼を惑わすチ
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「発狂死…?」




「そんな事が何件か続いたので、誰の血液を飲んだのか調べてみたら……ーールカちゃんのだったワケですよ」




本人の知らないところでそんなことがあったらしい。

「面白そうだったので僕も飲んでみたら…」
「普通飲まないでしょ……」

つっこんでみるがまぁまぁと流される。

「飲んで驚き、とっても美味しかったんですよ」

なら何故吸血鬼たちは発狂死したのか。



「大方、血の濃さに耐えられなかったんでしょう」



血の濃さ…?と聞き返す。

人間であるルカには分からない世界だ。

「同じ人間でも、その時の体調や気分、相手によっても味が変わるんですよ」

飲んだことがないのでそんなこともあるのか、と思う。

飲みたいとは思わないが。







「ルカちゃんの血はとても濃く、吸血鬼の理性を狂わせる。
そして甘美な味に酔い惑わせ、破滅に導く。

ただの人間にしては危険すぎる血、ということですよ」







ルカには到底理解できない。

人間は美味しいものを食べても正常を保てる。
故に糧である血を飲みおかしくなる理由が分からない。

「よく分かんない…」

「ふふ、まあ分かる必要もありませんしね」

するとフェリドはルカの首筋に顔を埋める。

「ーーっ、」




「正直、僕も何度理性を失いそうになったことか…」




「なら止めてよ」

ハッキリと言うがフェリドは聞く耳を持たない。

「止めませんよ。
こんなに美味しい血なんですから」

ガブッと噛み付かれる。

「いっ…!」

ジュルル…と血を吸われる音に目を閉じる。



先程血を飲んでいたためか、それほど吸われずに済んだ。

「なんでそんな危険を冒してまで…」

発狂するかもしれないと知っていながら飲むなんて。
少なくとも人間はそんな危険は冒さない。

「そうですねぇ〜…」

考えるように天井を眺める。






「………僕ら吸血鬼は長く生きていると、人間にとって大切なものを色々落としていくから…。

……刺激が欲しくなる。
長い生の退屈を紛らわすためのね」




((初めて彼の心に触れた気がした))
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「フェリドは、その……大丈夫…?」
「あはぁ〜ん、心配してくれるんですかぁ?」
「べっ、別に心配なんか!」
「大丈夫ですよ、貴族ですから」
「そういうもん…?」
「僕は紳士だから、鉄壁の理性を持ってますよ」
「……」
「あはは〜、何か言ってよ〜」


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